都会から離れて地方に移住したいと考える人が増えています。家賃や物価が安いといわれる地方ですが、移住をするのにも少なからず初期費用がかかります。収入を継続して得られる人ならばともかく、収入と出費が安定するまではある程度の蓄えも考えなければなりません。
引っ越し代や住宅費などが特に高くつきそうですが、国や地方自治体では移住をサポートする制度を多数用意しています。それら支援制度を利用することで、移住にかかる自己負担分を大幅に軽減することが可能です。
地方移住にはどれくらいの費用がかかるのか、またどのような制度があるのかを理解して、費用面で有利な田舎暮らしを目指しましょう。
地方移住にかかる費用の目安はいくら?
地方に移住するにはある程度の初期費用が必要です。地方移住に必要な費用項目と金額の目安をみてみましょう。
・引っ越し代
最初に必要となるのが引っ越し代です。引っ越しには多くの人手と労力が必要なため、引っ越し業者に依頼すると一定程度の金額になります。
引っ越しは荷物の量(家族の人数の目安)と移動距離によって料金は大きく変わります。地方移住となると、近隣県でも200km、遠方になると500km以上になるでしょう。500kmというと、東京~大阪間、東京~秋田間くらいの距離です。これらを踏まえた料金の目安は以下の通りです。
・住居費(敷金・礼金・家賃2カ月分)
地方の住居は都市部と比べると家賃が安く、一軒家が多い傾向にあります。地方で2部屋の間取りがある住居(2K・2DK・2LDK含む)を借りると、家賃は平均5~6万円 です。家賃6万円で初期費用を計算すると、次のような金額になるでしょう
・当面の生活費
引っ越しをすると、食材や日用品など当面の生活費が必要です。引っ越しの際に不要な食材・日用品を捨ててしまうこともありますし、新しい住居に合わせた家具・調度品なども用意しなければなりません。家の広さや家族の人数などによって幅がありますが、2~8万円程度でみておくといいでしょう。
・自動車購入費
地方は車社会です。都市部に住む方は自家用車を持っていないケースがありますが、地方では通勤にも車が必要になることが多いため、持っていなければ新たに購入しなければなりません。中古車か新車か、または購入かリースかなどによって初期費用は異なりますが、最低でも5~20万円程度は用意しておく必要があります。
以上を踏まえて計算すると、単身者であれば40~50万円、家族であれば50~70万円が地方移住で必要になりそうです。
移住者のための公的な支援がある
一般の人にとって、50万円というお金はなかなか簡単に用意できるものではないでしょう。人によっては引っ越し代や賃貸料が用意できず、地方移住を諦めてしまうかもしれません。
そんなときは移住を支援する公的な制度を使いましょう。国や地方自治体でも地方移住は進めたいことなので、手厚い支援が用意されています。移住者への公的な支援には次のようなものがあります。
・支援金の現金支給
都会から地方へ移住すると、現金で費用を支援してもらえる制度があります。実施しているかどうか、また実施していても金額や条件がどうなっているかは各自治体によって異なります。
・住宅購入費・家賃補助
移住に限らず、生活する上で最も大きな負担となる費用のひとつが住居費です。都会から移住することを条件として、住宅購入費や家賃を補助してくれる制度があります。また、20~30代の若者や、子どものいる世帯などであれば、さらに金額を加算される可能性があります。
・通勤補助
都市部の会社に勤めたまま、住居だけ郊外に移した人に対して、月額数万円を上限に通勤費用が支援されます。都市部まで鉄道で2時間ほどの距離にある自治体で実施される傾向にあります。
・起業支援金
移住するだけではなく地方で開業したい人は、開業資金や一部運転資金で支援を受けることができます。金額が高い上に、比較的容易に条件を満たせる支援金がたくさんあるので、地方で独立を考えている人は検討してみてください。
・新規就農支援
地方で農業を始めたいという人のための支援制度があります。運転資金や実技研修など、各地方自治体によってメニューが異なるので、事前の調査が必要です。
・現物支給
地域の特産品である米や加工品といった食材を支給する自治体もあります。
使いやすい移住支援制度を紹介
地方移住を支援する制度には次のようなものがあります。
・地域おこし協力隊(総務省)
都市部から移住する人を対象に、3年間を上限として移住先の市町村役場で働きながら生活基盤を整えられる制度です。給与だけではなく住居も用意され、任期後の独立起業資金の援助もしてもらえます。
・地方創生起業・移住支援金(内閣府)
東京圏から地方へ移住する人を対象に、移住資金・起業資金の支援をしてもらえる制度です。内閣府が都道府県や市町村の取り組みを支援する形で実施しています。移住支援金は最大100万円(単身者は最大60万円)、企業支援金は最大200万円を受け取れます。
・自治体独自の支援事業
国の支援事業ではなく、各地方自治体が独自に用意している制度があります。支援内容、金額、条件などは、自治体によってさまざまです。自治体が行っている事業では、次のようなものがあります。
▲住居(購入費・家賃などの補助、または移住促進住宅の格安提供)
▲子育て世帯への現金支給や各種公的サービスの無償提供
▲おためし移住体験ツアーやおためし住居の無料貸し出し
▲商店街の空き店舗や空き家の住宅の利活用支援
自治体独自の事業は各市町村に直接問い合わせるか、地方移住を支援する団体 や地方創生専門のwebサイトなどで調べることができます。
まずはどこに移住したいかが大切
都会から地方への移住を考えている人には、国、都道府県、市町村などの支援を利用することで経済的な負担を軽減することができます。ただし注意しておきたいのは、手厚い支援それ自体を目的にしてはならないということです。住み慣れない地域に新しく生活基盤を築き上げるには、それなりの労力と時間が必要であり、相応の覚悟も求められます。
地方移住は、まず住みたい地域を決め、おためし移住体験などを利用して、その地域が自分に合っている環境かどうかを確かめておくことをおすすめします。その上で、国や地方自治体が用意している制度があれば、存分に使うといいでしょう。
参考
引越し見積もり価格はだいたいいくら?平均金額や業者の選び方、引っ越し費用を安くする方法|引っ越し見積もり・比較【SUUMO】
https://hikkoshi.suumo.jp/oyakudachi/8635.html
全国賃貸管理ビジネス協会| 2021 9月
https://www.pbn.jp/yachin/date/2021/09/
賃貸契約に必要な初期費用の相場はどのくらい? 安くする方法は? 分割はできる? | 住まいのお役立ち記事
https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/chintai/fr_money/chintai_shokihiyou/
【地方移住検討中】手厚い移住支援金の内容と条件を解説!テレワーク移住支援も
https://nativ.media/20002/
農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金):農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/new_farmer/n_syunou/roudou.html
総務省|地域力の創造・地方の再生|地域おこし協力隊
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/02gyosei08_03000066.html
起業支援金・移住支援金 - 地方創生
https://www.chisou.go.jp/sousei/shienkin_index.html
認定NPO法人 ふるさと回帰支援センター
https://www.furusatokaiki.net/