地方移住を考えたときに、大きく予算を割いておかねばならないのが住居に関わる費用でしょう。賃貸の場合であれば、敷金、礼金、前家賃がかかる場合もあり、なるべくその費用を抑えようと考えるのは当然のことです。移住者を歓迎する地方自治体では、このような住居に関わる費用を抑制できるように「空き家バンク」というシステムを用意することが多くなっています。今回は、空き家バンクの概要からメリット・デメリット、その現状まで解説していきます。
空き家バンクとは?
「空き家バンク」は、地方自治体が運営している移住者のための不動産情報提供サービスです。地方で、住居や空き地を貸したり売却をしたい持ち主が不動産情報を登録できる仕組みになっており、移住希望者はこのサービスを利用して持ち主にアクセスできるのです。地方によっては、自治体から委託を受けたNPO(非営利団体)が運営している場合もありますが、どちらも公的な不動産情報提供サービスだと思えばよいでしょう。空き家バンクと言う名前は通称なので、実際には地方自治体が特有の名前を付け、移住ポータルサイトや自治体のホームページなどで紹介しています。
もともと空き家バンクは、少子高齢化や地方の過疎化によって発生した空き家、もしくは空き地を活用するために、国(国土交通省)の指導で始まった制度です。空き家バンクは全国の自治体の約4割(763自治体)で設置されており、約2割(276自治体)が準備中、もしくは今後設置予定となっています。※2019年5月時点
空き家バンクのメリット・デメリット
公的な不動産情報提供サービスである空き家バンクには、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?ここでは住居を借りる際のメリット・デメリットについて説明します。
メリット
・住居を借りる際の費用を抑えられる
空き家バンクを利用する一番のメリットは、住居を借りる際の費用を抑えられることでしょう。一般の不動産業者の仲介とは違い、空き家バンクを利用した場合には仲介手数料が発生しません。数年ごとの更新手数料は契約内容に依りますが、少なくとも不動産業者がいないので不動産業者分の手数料がかかることはありません。移住に関わる費用を少しでも抑えたいのであれば空き家バンクは強い味方になってくれます。
・補助や助成金が用意されている場合がある
地方自治体によっては、空き家バンクを利用する際に補助や助成金を用意しているケースがあります。一般の不動産業者を使った場合でも支援を受けられることは多いのですが、どうせなら空き家バンクを使い、仲介手数料の削減と合わせて移住にかかる費用を抑えるのが良いでしょう。
デメリット
・賃貸借契約を自分で締結する必要がある
空き家バンクでは不動産業者が仲介しないため、賃貸借契約は当事者同士で締結する必要があります。また契約はもちろん、実際の取引には地方自治体は関与しません。契約行為を含む賃貸の交渉はすべて自分で行う必要があります。貸主が契約書を用意していることが多いと思いますが、契約書の内容精査には専門家を入れて検討する必要があるでしょう。
・トラブルは自分で解決する必要がある
空き家バンクで貸し出される住居は、ほとんどが築古と呼ばれる中古物件です。中には、十数年人が住んでいなかった物件などもあることでしょう。このような場合に問題となるのが、住居の修繕費です。基本は貸し出すときに貸主が住居の基本的機能を保証するものですが、場合によっては「現状渡し」と呼ばれる、今あるままの状態で賃貸されることもあります。契約時には、住宅の修繕に関わる費用負担や「隠れたる瑕疵(当時は発見できなかった、あとから見つかる住居の傷や不具合箇所)」について、どちらが修繕費を負担するのかはっきりさせておきましょう。空き家バンクでは、このようなトラブルもすべて自分で解決する必要があるのです。
・住居の詳細情報が載っていない場合がある
空き家バンクに不動産に関する情報を掲載するのは、一般的には貸主です。貸主は不動産情報を扱うプロではないので、物件に関する情報は不足している可能性が高いと考えておきましょう。空き家バンクを使って住居を探す場合には、必ず現地で住居の状況について確認することが必要です。
空き家バンクの現状
空き家バンクは、住居を賃貸する場合の費用が抑えられるという魅力がありますが、賃貸契約及びその交渉が一番の問題となります。後々のトラブルを防止する意味でも賃貸契約を疎かにすることはできませんが、契約の専門家ではない私たちが自力で契約を結ぶことには無理があります。
このような問題を反映してか、一部の自治体では空き家バンクの体裁を取りながら、実際には地元の不動産業者を紹介していることも多いのが現状です。ただしこのような場合でも、空き家バンクを利用すれば助成を受けられる可能性があります。空き家バンクを利用するメリットとデメリットは地方自治体ごとに変わるので、地方移住の検討時には補助や助成の条件をよく確認しておきましょう。
まとめ
地方移住には、大きな費用がかかります。ただし費用を抑制しようとするあまり、その後のリスクから目をそむけるようなことがあってはなりません。地方移住の際には、リスクとコストのバランスを考えることが重要です。
<参考>
空き家・空き地等の流通活性化の推進について
https://www.mlit.go.jp/common/001290017.pdf
空き家バンクとは?メリット・デメリット、仕組みや問題点も解説!
https://o-uccino.com/front/articles/57638#%E7%A9%BA%E3%81%8D%E5%AE%B6%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%82%92%E5%88%A9%E7%94%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%A8%E3%81%AF
「空き家バンク」で地方移住がスムーズに。制度や利用時の注意点とは?
https://www.homes.co.jp/cont/town/town_00002/