新型コロナウィルスの感染拡大は、働き方改革推進の目玉であったテレワークを劇的に普及させました。それまでのオフィスに縛られた働き方ではなく、各個人が事情に合わせてフレックスやテレワークを組み合わせ、自由な働き方を選べるようになったのです。またテレワークと同じように、新型コロナを契機として注目されているのがサテライトオフィスです。今回はサテライトオフィスの概要から、近年政府の政策としても注目されている地方型サテライトオフィスについて解説していきます。
サテライトオフィスとは
サテライト(satellite)とは、英語で衛星を意味します。サテライトオフィスとは、本社オフィスの近郊に衛星のように設置された、比較的小型のオフィスを指します。サテライトオフィスと支店や支社は同じように思えるかもしれませんが、支店や支社が顧客へのサービスや業務の都合で設置されているのに対し、サテライトオフィスは従業員の働き方を中心に考えて設置されているのが大きな違いです。サテライトオフィスはオフィスの賃料が比較的安い都心近郊に設置され、テレワークの弱点とも言えるコミュニケーションの不足とマネジメントの問題を解決する手段として注目を集めています。また、2021年から政府が推進している「デジタル田園都市国家構想」の中でも、地方型サテライトオフィスの設置を積極的に進めることになっているのです。
デジタル田園都市国家構想でも推進される地方型サテライトオフィス
デジタル田園都市国家構想は、内閣総理大臣を議長とするデジタル田園都市国家構想実現会議で策定・推進されている、日本国政府の政策です。その目的は、デジタル化によって地方と都市の格差を縮め、都市の活力と地方のゆとりの両方を享受できる国を実現することにあります。デジタル田園都市国家構想は、「デジタル実装による地方の課題解決」、「ハード・ソフトのデジタル基盤整備」、「デジタル人材の育成・確保」、「誰一人取り残されないための取り組み」という4つの軸に沿って施策が進められますが、地方型サテライトオフィスの設置は「デジタル実装による地方の課題解決」の中で、都市と地方の格差を埋め、同時に地方創生を実現できる主要施策として取り入れられています。また総務省や国土交通省も地方創生を目的として、都市に本社をおく企業のサテライトオフィスを積極的に地方に誘致しています。
地方型サテライトオフィス
地方型サテライトオフィスは、従来のサテライトオフィスの機能をさらに拡大させたオフィスの形態です。サテライトオフィスを都心近郊ではなく地方に展開することで、UターンやIターンを希望する従業員の離職を防止し、同時に地方移住を希望する従業員にとってはワークライフバランスを実現する有効な手段となります。
地方型サテライトオフィスのメリット
地方にサテライトオフィスを展開すると、企業や従業員に以下のようなメリットが生まれます。
企業のメリット
・オフィスの賃料低減(固定費低減)
地方にオフィスを展開し、都心のオフィススペースを縮小することによりオフィス賃料や光熱費など、固定費の低減が可能になります。
・従業員の離職防止
UターンやIターンなどを希望する従業員が、やむなく離職することを防止できます。これは、優秀な人材を継続的に確保できるという効果を生むだけではありません。低い離職率は、新卒やキャリアを採用する際の企業の魅力としても訴求できます。
・BCPの実現
従業員と業務を分散させることは、BCP(事業継続計画)の実現につながります。災害や事故が本社オフィスの近辺で起きた場合に、人員と業務を分散させてあれば早期の復旧やデータ保護が可能になるのです。
・生産性の向上
オン/オフの切替えを効率的に行うことで業務効率が上がり、生産性が向上します。実際に地方型サテライトオフィスで働く人に行ったアンケートでは、業務効率が上がったと答える人が多いのです。
・通勤費の削減
地方移住した場合、一般的には通勤距離が短くなるので通勤費(定期代など)を削減することが可能になります。またテレワークを併用すれば、さらに通勤費は削減可能です。
・地方創生への協力
地域活性化や税収の向上などで、地方型サテライトオフィスを設置した地域に貢献することができます。地方創生への協力姿勢は、企業イメージの向上にもつながります。
従業員のメリット
・ワークライフバランスの実現
通勤時間の短縮や無駄な残業の削減、オン/オフの効率的な切替えで、ワークライフバランスの実現が可能になります。
・多様な働き方の実現
地方移住や二拠点生活が可能となり、多様な働き方を実践できます。自然の多い環境や通勤のストレスがない生活環境を楽しみながら働くことで、生きがいや働きがいを見つけることができるでしょう。
・UターンやIターンの実現
出身地や興味のある地方にサテライトオフィスがあれば、UターンやIターンの希望を叶えることができます。仕事の少ない地方で職を探すことなく、現在と同じ労働条件で働くことができます。
まとめ
企業と従業員にも多くのメリットがあり、地方には地域活性化や税収向上のメリットがある「三方良し」の政策。それが地方型サテライトオフィスの魅力です。このような政策によって多様な働き方が実現され、地方から国全体を元気にして行きたいものです。
<参考>
生産性向上も期待される「地方型サテライトオフィス」の動向と成功事例
https://www.workersresort.com/jp/facility/local-satellite-office/
デジタル田園都市国家構想基本方針
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/pdf/20220607_honbun.pdf