地方移住に関心を持つ人はとても多くなっているものの、特殊な状況によってその数は変化することがあります。近年では、新型コロナウィルスの感染拡大が地方移住への関心度に影響を与えていると言われていますが、実際はどのようになっているのでしょうか?今回は内閣府が行った「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」の結果を元に、新型コロナウィルスの感染拡大が移住希望者に与えた影響について考えていきます。
新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査とは
「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査(以下、本調査と言います)」とは、内閣府がインターネットで実施している新型コロナウイルス感染症の影響に関する調査です。
本調査は2022年(令和4年)の7月で5回目の報告となり、「働き方」、「子育て」、「地方」、「その他」の4項目について、生活意識や実際の行動にどのような変化があったかを集計しています。5回目の今回は回答者数が10,056人(第4回の回答者数6,481人を含む)となっており、2020年6月(1回目)、2020年12月(2回目)、2021年6月(3回目)、2021年11月(4回目)、2022年7月(5回目)に発表となったデータとの比較が可能で、各項目別に意識や行動がどのように変化しているかを見ることができます。※項目によっては実施されていない回もある
地方移住への関心度の変化
本調査で東京圏在住者に「地方移住への関心」を調べたところ、以下のような結果が判明しました。調査1回目から5回目までで顕著に変化したのは(地方移住に)「強い関心がある」、「関心がある」、「やや関心がある」の合計値で、25.1%(1回目)から34.2%(5回目)に増えています。一方、「まったく関心がない」、「あまり関心がない」と答えた人は75%から65.8%に減少。また東京圏のエリアを多摩地区を除く23区内に絞ってみると、東京圏では34.2%であった移住に関心のある人たちは、37.2%に増えるのです。地方移住への関心度が高くなる理由としては「テレワークや長距離通勤など、多様な働き方が可能になった」、「自然の多さやストレスのない生活に魅力を感じる」などの理由が考えられますが、23区内での結果を見る限り、「人との密を避けたい」という理由も関心度に影響しているように思えます。
20歳代は地方移住に対する関心度が高い
上記の結果は全年齢に対する調査結果でしたが、年齢を20歳代に絞ると、また違う結果が見えてきます。上記と同様に調査結果を集計してみると、地方移住に関心のある人たちは32.1%から45.2%に増え、東京23区内に絞ると50.9%と半数を超えます。新型コロナウイルス感染症の影響下における地方移住への関心度に関しては、若い世代の関心度が、より高くなる傾向にあったのです。
コロナ禍で地方移住への意識はどのように変化したか
次に東京圏在住で地方移住に関心がある人に対して、関心を持った理由をたずねた結果を見てみましょう。この調査では、以下の12項目の選択肢を用意し、複数回答可で結果を集計しています。※本調査に関しては、2020年6月(1回目)のデータが無い
1. 人口密度が低く自然豊かな環境に魅力を感じたため
2. テレワークによって地方でも同様に働けると感じたため
3. 感染症と関係ない理由
4. ライフスタイルを都市部での仕事重視から、地方での生活重視に変えたいため
5. 現住地の感染症リスクが気になるため
6. テレビやネット等で地方移住に関する情報を見て興味を持ったため
7. 買物・教育・医療等がオンラインによって同様にできると感じたため
8. 感染症を契機に地元に帰りたいと感じたため
9. 感染症を契機に将来のライフプランを考え直したため
10. その他
※他に、「特にない」、「わからない」という選択肢もあり
2回目から5回目の調査で結果に若干のばらつきはありますが、上記の結果はおおよそ選択した人が多い順に並べてあります。この中で上位4番目までと6番目、7番目などは、コロナ禍の前から地方移住に興味を持つ人の理由として顕在化していたものです。コロナ禍になってクローズアップされた理由としては、「現住地の感染症リスクが気になるため」、「感染症を契機に地元に帰りたいと感じたため」、「感染症を契機に将来のライフプランを考え直したため」になるでしょう。この調査では年齢別の結果が示されていませんが、「地元に帰りたい」、「この先のライフプランを考えた」などは、若い人たちが地方移住に興味を持つきっかけとなった理由といえるのではないでしょうか?
それぞれの選択肢を選んだ人は4.7%〜8%とバラついていますが、いずれも調査回数を経るごとに(日数を追うごとに)これらの選択肢を選ぶ人は減少する傾向にあります。つまり新型コロナウィルスが弱毒化して脅威が減る傾向と、これらの選択肢は比例して選択されなくなっているのです。
まとめ
上記のような結果から、発生当時のような危機感は減ってきているが、新型コロナウィルスの感染拡大は、若い人たちを中心に自らのライフプランと都会で暮らすことの問題を考える契機となった、といえそうです。新型コロナウィルスに限らず、将来的に新しい脅威が生まれてくることも考えられます。若い人たちのように、状況の変化に応じて対応を即座に変えられる柔軟な思考を、いつまでも持っておきたいものです。
<参考>
第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/pdf/result5_covid.pdf
第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査 調査項目
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/pdf/form5_covid.pdf