【観光産業を盛り上げていきませんか?Vo.7】 ~副業・兼業で地方の観光産業に関わり地域活性化へ貢献~
亀和田 俊明
2022/12/27 (火) - 16:00

新型コロナウイルス感染症の水際対策が大幅に緩和されるとともに、政府の観光支援策「全国旅行支援」が始まって1ヵ月以上が経過しました。支援策の開始前と比べ、国内旅行客も訪日外国人旅行者も予約数は急増しており、10月の宿泊者数も北海道で前年同月比22%増、九州7県では24.1%といずれも上昇するなど3年にわたるコロナ禍で疲弊していた地方都市の観光地も賑わいに転じ、地域の観光産業も活況を呈してきています。今回は首都圏で働く30~40代のビジネスパーソンが副業・兼業によって、復活の兆しを見せる地方の観光産業に関わることについて地域貢献や役割なども交え触れてみたいと思います。

2025年に訪日客のコロナ前の水準回復目指し目標設定

日本政府観光局によれば10月の訪日外国人旅行者は49万8600人で、9月の20万6500人から約2.4倍になり、新型コロナウイルス感染症拡大前の2020年2月の約108万人に継ぐ規模となりました。個人旅行が解禁された影響から観光目的による来日は28万8909人で前月比15倍へ急増していますが、国・地域別では韓国(12万2900人)、アメリカ(5万3200人)、香港(3万6200人)の順で、2020年3月以来で最多となりました。

下表のように2019年まで順調に伸びていた訪日外国人旅行者数と同旅行消費額は、パンデミックにより日本の観光産業に大きな打撃を与え、2020年から2022年にかけて低迷してきました。政府は、2016年の「観光ビジョン」で2030年の目標値となる6000万人、15兆円を掲げていましたが、当面は国際旅客数が2019年の水準に戻るといわれる2025年にはコロナ前の状況まで回復させる目標(年間5兆円)を設定する方針を固めています。

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「2022年度第二次補正予算」では、インバウンド対策など観光再生に1500億円が盛り込まれていますが、地方への誘客にも力を注ぐとしています。地方部での訪日客宿泊者数は、2019年実績の延べ4309万人からの上積みを狙うもので、具体的な目標と達成に必要な施策を検討し、2025年を目標とする新たな「観光立国推進基本計画」を2023年3月末に閣議決定する意向で、既に交通政策審議会観光分科会も開催されています。

「多様な働き方などの推進」へ転職・副業受け入れ先支援

さて、10月末に政府は、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」をまとめました。日本経済が新型コロナウイルス感染症の影響で大きな落ち込みを経たあと、社会経済活動の正常化が進みつつありますが、「物価高騰・賃上げへの取り組み」、「円安を活かした地域の『稼ぐ力』の回復・強化」、「『新しい資本主義』の加速、国民の安全・安心の確保」の4つを柱とした総合的な経済対策です。

新型コロナの水際対策の抜本緩和を機に、戦略的なプロモーションと観光産業の高付加価値化を通じ、コロナ禍で失われた5兆円のインバウンド需要を復活させるとともに、国内観光やイベント需要の喚起、文化芸術・スポーツの振興等により需要回復、地域経済の活性化を図ることを掲げており、「観光立国の復活」と明記し、我が国の成長戦略の柱のひとつとして、地方経済・雇用を支える観光立国の復活を図り、地方創生を進めるとしています。

観光立国の復活

・インバウンド消費年間5兆円超の速やかな達成に向けた集中パッケージ推進
・新たな「観光立国推進基本計画」策定。観光地・観光産業の再生・高付加価値化
・戦略的な訪日プロモーション、コンテンツ海外展開促進、国内観光活性化

また、「人への投資」の抜本強化と成長分野への労働移動・構造的賃上げに向けた一体改革では、訓練後に非正規雇用を正規雇用に転換する企業や賃上げを伴う転職・労働移動の実現に向け、より高い賃金で新たに人を雇い入れる企業への支援の拡充のほか、在職者のキャリアアップのため転職支援としてリスキリング・転職までを一括で支援する制度を創設。地域金融機関等による地域企業への人材マッチング等に取り組み、副業を受け入れる企業への支援も新設。

人への投資の強化と労働移動の円滑化、多様な働き方などの推進、人的資本に関する企業統治改革

・「人への投資」の施策パッケージを5年1兆円へ拡充(企業間・産業間の労働移動の円滑化、在職者のキャリアップのため訓練から転職まで一気通貫で支援、労働者のリスキリング支援)、労働移動円滑化の指針を2023年6月までに策定
・若手研究者への支援強化、デジタル推進人材育成230万人拡大、成長分野への大学高専の学部再編等支援
・非財務情報開示の充実、生産性を高める働き方改革、多様で柔軟な働き方を選択できる環境整備、就職氷河期世代支援

2018年1月に厚生労働省による「モデル就業規則」の改訂を受けて大企業から中小企業まで、さまざまな企業が「副業解禁」を打ち出しましたが、政府も「経済財政運営と改革の基本方針 2022」(「骨太の方針」)では、ポストコロナの「新しい日常」に対応した多様な働き方の普及を図るため、時間や場所を有効活用できる良質なテレワークを促進しているほか、労働者の職業選択の幅を広げ、多様なキャリア形成を促進する観点から副業・兼業を促進しています。

コロナ禍でリモートワークが普及したことも少なからず影響しているのでしょうが、プロフェッショナル人材のフリーランス・副業といった多様な働き方をサポートする「みらいワークス」が運営の地方副業マッチングサービスの「Skill Shift」は、2017年12月のサービス開始以来、右肩上がりにプロフェッショナル人材登録者数が増加し、2022年9月末には下表のように累計で1万人を突破したといいます。

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(資料:みらいワークス「Skill Shift登録者数推移」より)

地方観光に興味がある、地方観光を変革いただける方はこちら
https://glocalmissionjobs.jp/lp/kankou

地方副業に興味ある理由は「お金以外の目的」が6割超

また、「みらいワークス」が実施した首都圏大企業管理職に対する「地方への就業意識調査」では、地方の企業で働くことに「興味あり」「やや興味あり」の合計は昨年より5.3%増加し、52%と初めて過半数を超えました。特に若い世代(35~44歳)が昨年より12.1%増加し、56.8%となっています。同時に「地方で働くことの関心が強くなった」人も昨年より4.2%増加し、37.4%です。

地方副業に興味がある人も昨年より3%増加し、59.8%と過去最高になっています。特に35~44歳世代が昨年より10.1%増加し、65.6%になりました。地方副業に興味がある理由としては、最も多いのが「お金以外の目的」で61.3%でした。具体的には、「地方中小企業を支援することでのやりがい」が34.1%、「スキルアップ、成長」が18.2%、「地方貢献・地方創生」が9%で続いてています。

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(資料:みらいワークス「地方への就業意識調査」より)

地方の中小企業での副業をする場合、リモートでの支援ではなく、必ず一度は現地に行きたい、必要であれば現地に行きたい、という現地に赴いての支援をしてみたいが、75.4%とかなり高率でした。そして、地方での副業をした後に、その地域への移住・転職につながる可能性があると思うと答えた人は71.7%、と昨年より4.8%増加。「35歳~44歳世代」の可能性が最も高く、75.2%で昨年より9.1%増加しています。

テレワークをはじめとした柔軟で新しい働き方の広がりを背景に企業で働く人にも帰属意識、働き方や人生への価値観の変化をもたらしています。同調査でも地方副業に興味がある理由として「お金以外の目的」が約6割を占めていました。大企業では定年まで働き続けたいと考える一方、単一キャリアではなく、副業・兼業や起業など、複線型のキャリアに興味を持つ人も多く、選択肢も広がり、地域貢献など地方で活躍したいという人も増えてきています

地域の観光産業活性化に貢献する副業・兼業人材に期待

新しい活躍の場を求め首都圏の大企業を離れることも珍しくなくなった今、副業・兼業など社外への挑戦は自らのキャリアステップを考える上で有益です。地方をステージとした首都圏の大企業の管理職、ビジネスパーソンの自発的なキャリアデザインやネクストキャリアを考えた場合、今まで関わることがなかったつながり、自身の専門性の再発見や職種を超えたスキルの獲得、組織や事業の全体観の獲得ができるでしょう。

コロナ禍で大きな打撃を受け、縮小してしまった観光関連市場ですが、総務省の労働力調査では観光に関わる宿泊・飲食・娯楽業の全国の就業者数は8月時点で約406万人、コロナ前の2019年8月と比べ1割の減少です。2割減となった宿泊業や空港関係、バスなどの交通関連も含め人員を削減したり、採用を取りやめたりする企業も多くありましたが、全国旅行支援や水際対策関与による旅行需要が回復しつつあるものの現在は人出不足に陥っています。

観光産業は地域経済において重要な役割を果たしてきましたが、我が国の成長に資する基幹産業として、さらに高いレベルの観光立国を目指すためには、以前から課題といわれていた人材の量的・質的確保や育成が必要です。人材確保については、多様な人材が働きやすい環境づくりや副業・兼業を活用した新たな働き方を促進することが重要ですし、政府が新たに副業を受け入れる企業への支援が新設されることは期待されます。

前述の調査のように地方副業に興味がある理由として「地方貢献・地方創生」を挙げている方もみられますが、観光産業は「地方貢献・地方創生」に資する産業であり、2021年版の「旅行・観光開発指数」の世界ランキングで1位になった日本では、今後ますます期待される分野です。地方創生に携わってみたい、地域の観光産業の活性化に貢献したい、観光復活のために課題解決と魅力創出など今後の観光産業を牽引していけるような人材が求められています。

観光産業に従事していない方でもマーケティング・ファイナンス・マネジメント・IT等さまざまな分野の専門スキルを活かすこともできますし、首都圏の大企業から地方での副業・兼業で地域に貢献したい、自身のスキルアップを図りたい、さらにネクストキャリアのフィールドとして地方に関わりたい人にとっては、多彩で豊かなコンテンツに恵まれた日本で、地域に密着した観光産業を通し地方副業として地方に関わってみてはいかがでしょう。

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