近年、地方移住と同時に起業する人が増えています。政府が地方での起業支援金や移住支援金を用意していることも影響していますが、地方では開業費用を抑えられるなど、地方ならではのメリットも多いからです。地方で起業することは本当にビジネスにとって有利なことばかりなのでしょうか?起業する前に注意すべきデメリットはないのでしょうか?今回は、地方で起業するなら絶対に知っておきたいメリットとデメリットについて解説していきます。
地元密着型か地元発信型か
冒頭で近年は地方移住と同時に起業する人が増えていると書きましたが、地方での起業は2つの種類に分かれます。この言葉にしっかりとした定義があるわけではありませんが、ここでは「地元密着型」、「地元発信型」と呼ぶことにしましょう。
地元密着型とは、移住と同時、もしくは移住後に起業し店舗(カフェやレストラン、セレクトショップなど)や地元向けの事業(便利屋や介護サービスなど)を始めるタイプです。この事業のサービスの対象はあくまで移住した先の地元となります。
地元発信型とは、サービスの対象が地元以外の顧客です。たとえばソフトウェアの開発会社を起業する、地元名産品のインターネット販売を開始するなどがこれにあたります。地元発信型の特徴には、経営者が必ずしも移住をしないということが挙げられます。もちろん地元密着型でも経営者が都会に本拠を置く場合はありますが、地方自治体からの支援や起業支援金、移住支援金の関係もあり、ほとんどの人が移住を前提として起業しています。
この差はどこにあるのでしょうか?それは地方移住をしたいのか、それとも地方でビジネスをしたいのか、という考え方の差にあります。これには、田舎で起業するメリットとデメリットが少なからず関係しているのです。
田舎で起業するメリット・デメリット
それでは田舎で起業することには、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
メリット
・開業資金や固定費を抑えられる
開業時に店舗や事務所を借りる場合、保証金や賃料を都会に比べてかなり安く抑えることができます。開業資金はもちろんですが、毎月の固定費(賃料)が安くなることは事業においてはこの上ないメリットとなるでしょう。
・人件費を抑えられる
都会に比べて求人の少ない地方では、人件費も安く抑えることができます。競争率の高い都会とは違い、優秀な人材を雇用することも可能です。
・競合他社が少ない
競合がまったくないということはありませんが、都会に比べれば競合は少ない傾向にあると言えます。競合他社が少なければ無意味な価格競争をすることもないので、事業の利益率確保に寄与することでしょう。
・助成金を活用できる
地方での起業には、地方自治体が独自に用意した支援策や政府が用意している起業支援金、移住支援金が使えます。まとまった資金が必要になる開業時にはこれらの支援策が強い味方になります。
・生活費を抑えられる
事業以外の私生活でも、固定費(家賃)や食費を抑えることができます。特に家賃は家計に占める割合が大きいので、田舎で暮らすことの大きなメリットだと言えます。
・田舎の生活を満喫できる
事業運営費や生活費のように物理的なメリットではありませんが、田舎には自然が多くストレスの少ない生活を送ることができます。これは、本人はもちろん、家族にとっても大きなメリットでしょう。
・地元ならではの名産品がある
必ずあるとは言えませんが、地方にはその地方ならではの名産品がある場合があります。他の地方にはない、地元限定の名産品があればこれを事業に活用することもできます。
デメリット
・地元の市場は小さい
インターネットで地元名産品の販売を行うような場合は関係ありませんが、地元に向けて事業を行う場合には市場の小ささが事業拡大の障壁になります。必要に応じて地元の商工会議所や企業コンサルタントなどに相談し、起業しようとする事業の市場規模を確認しておきましょう。
・田舎は常に人手不足
メリットの「人件費を抑えられる」とは相反する内容ですが、地方では常に人手不足が続いています。優秀な人材や若い人材は都会に出てしまうため、どうしても地元には人材が不足してしまうのです。特にIT系の事業を起業する場合には、人材は悩みの種となりがちです。
・自分も田舎に移り住む必要がある
地方自治体が用意した支援策や政府が助成している起業支援金、移住支援金を受け取るためには、その地方に移住する必要があります。地方に移住するということは、そのメリットだけでなくデメリットも受け入れなければなりません。
・地域住民とのコミュニケーションが重要
地元に根ざして事業を行っていくのであれば、地域住民とのコミュニケーションが必ず必要となります。店舗であれば顧客のみならず地域住民とのコミュニケーションが必要になりますし、会社を興した場合でも地域とのコミュニケーションは重要です。
・公共交通機関やインターネット環境が整っていない
地方では公共交通機関の便が悪いため、自動車を用意することが必須となります。事業を行う場合には車のための経費も念頭に置く必要があります。また都会ほどインターネット環境も整備されていないことがあるので、インターネットを使う事業(IT系やECサイト系)の場合はネット環境の整備状況もよく確認しておきましょう。
まとめ
田舎で事業に関わるコストを抑えたい地元発信型、地元に貢献しながら田舎暮らしも楽しみたい地元密着型。それぞれの事業の形によってメリットとデメリットは変わってきます。
これから田舎での起業を考えているなら、自分の事業にとってのメリット、デメリットを確認し、しっかりと対策をしていきましょう。
<参考>
田舎で起業するメリット・デメリットは?向いている業種や成功例も解説!
https://biz.moneyforward.com/establish/basic/51460/#i-17
田舎で儲かる仕事10選|地方移住でビジネスをしたいあなたへ
https://maneql.co.jp/blog/2021/04/29/countryside-business/?amp=1