テレワークの普及は地方移住の方法や働き方にさまざまな可能性をもたらしましたが、決まった拠点を持たずに生活する「アドレスホッパー」という新しいライフスタイルも登場しています。決まった拠点を持たない、というライフスタイルとはどのようなものなのでしょうか?生活に支障は出ないのでしょうか?今回はアドレスホッパーの概要から、他の移住方法との違い、そのメリット・デメリットについて解説していきます。
アドレスホッパーとは?
アドレスホッパーとは、居住地(Address)を転々と変える人(Hopper)という意味で作られた造語です。この名前からわかるとおり、アドレスホッパーはホテルや旅館などの宿泊施設、マンスリーマンションやシェアハウスを転々としながら生活する人々のことを指します。アドレスホッパーは拠点(住居)を転々と変えますが、ほとんどの場合仕事は変えず、テレワークを用いた遠隔勤務で生計を立てています。まさにテレワークの普及が生んだ、新しいライフスタイルというわけです。
アドレスホッパーというライフスタイルを続けていくためには、仕事がテレワークでこなせるものでなければなりません。アドレスホッパーに多い職業は、デザイナーやプログラマー、ライター、マーケターなど。つまりパソコン一台あればできる仕事が、アドレスホッパーに向いているというわけなのです。
二地域居住者やノマドワーカーとの違い
アドレスホッパーを含む2つ以上の拠点で暮らす人たちを多拠点生活者とも呼びますが、アドレスホッパーは二地域居住者(デュアラー)やノマドワーカーと何が違うのでしょうか?
広義の意味での二地域居住は、都会と田舎の二地域で生活を送ることを指します。これにはリゾート地に別荘を構える別荘族や、田舎に古民家を購入し週末だけ田舎暮らしを楽しむ人たちなども含まれます。ただし近年はテレワークの普及により、都会の家を縮小して仕事だけを残し、主たる生活拠点を田舎に移す人たちも増えています。これらの二地域居住者とアドレスホッパーの違いは、頻繁に生活拠点を変えないことです。
ノマドワーカーは遊牧民を意味するノマド(nomad)と、労働者(worker)を組み合わせた造語です。ノマドワーカーはアドレスホッパーと違い、生活拠点ではなく仕事をする場を変える人たちという意味合いが強いと言えます。テレワークの普及によりこれらの区分けは難しくなっているのですが、ノマドワーカーは遊牧民のように場所を移動しながら働くライフスタイルで、生活拠点は一カ所に置いておくことが多いものです。
アドレスホッパーのメリット・デメリット
では上記のような特徴を持つアドレスホッパーには、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
メリット
・好きなライフスタイルを実践できる
何と言ってもアドレスホッパーのメリットは、これに尽きるでしょう。テレワークなので通勤であくせくすることもなく、また自然の多い土地を働く場所に選べば、極力ストレスの少ない生活を送ることができます。その場所に飽きれば次の土地に移ることも簡単で、好きな土地に好きなだけ滞在することができます。
・固定費や光熱費を低減できる
拠点を一カ所に持たなければ、固定費(敷金、礼金、更新料などを含む家賃)や光熱費(電気やガスの基本料金、契約料など)を低減させることができます。また基本的に生活用品の揃った場所を移動するので、家庭電化製品や生活用品なども買い換える必要がありません。
デメリット
・簡単に離職や転職ができない
ライフスタイルを一度アドレスホッパーに合わせてしまうと、簡単に離職や転職ができなくなります。一般的に離職をして次の職を探す場合には、給与や労働条件などの待遇を考えて就職(転職)活動を行いますが、アドレスホッパーの場合には待遇の前にまずテレワークで働けることが前提となってしまうからです。アドレスホッパーは自由な働き方と思われているかもしれませんが、転職できる職種や企業はかなり限定されてしまうのです。
・居住地を探し続けなければならない
その名の通り次々と住むところを変えていくので、常に居住地を探さねばなりません。アドレスホッパーの場合、住居としてホテルや旅館などの宿泊施設、マンスリーマンションやシェアハウスを使うため、長く住み続けることが難しいのです。
・宿泊費や移動費は意外とかかる
上記のような宿泊施設の利用料金には光熱費や基本的な住宅設備の使用料が含まれているので、生活費は結果として割高になります。また、居住地を移動するための交通費や荷物を送るための輸送費もバカにはできません。
・家族を持ちにくい
配偶者や子どもの生活環境を考えると、アドレスホッパーでは家族を持ちにくいかもしれません。家族を特定の場所に残し、働き場所だけ変えていく方法も考えられますがこれはノマドワーカーに分類されます。
・住民票、郵便物
住所が特定できないと、住民票はどうなるのか?また郵便物はどうするのか?という問題があります。ほとんどのアドレスホッパーは実家や知人宅などに住民票を置いているようですが、住民票に載っている住所に居住実態がない場合は、違法(5万円以下の過料)となるおそれがあります。
・社会的信用を得にくい
各種ローンやクレジットカードの審査では、申請された住所に居住実態のあることが合格の前提となっています。住所が特定できない、または居住実態がない、では社会的信用は得にくいと言えるでしょう。
まとめ
自由な暮らしや田舎暮らしを最大限楽しめそうなアドレスホッパーですが、思った以上にデメリットも多いことがわかります。アドレスホッパーを続ける、もしくはこれから始めようとするならば、慎重に準備を進める必要がありそうです。
<参考>
多拠点生活を支援するサービスまとめ
https://hybridstyle.net/multiple-residences/
アドレスホッパーとは|メリット・デメリットから注意点まで
https://www.osaka-dojima-residence.jp/tips/2012_01/#a3_2
連載|アドレスホッパーはリモートワークにより広まるのか?
https://aki-katsu.co.jp/magazine/archives/917
家を持たないアドレスホッパーとは?メリットデメリット、生活費用も解説
https://www.lvnmatch.jp/column/sell/15775/