政府や地方自治体、地元企業が地域活性化のため、一丸となって推進している地方移住。中でも二地域居住は、移住へのハードルを下げる強力な打開策だと言われています。テレワークの普及で、多くの移住希望者が興味を持つようになった二地域居住。その概要はどのようなもので、地方自治体や地元企業はどのようなアピールを行っているのでしょうか?今回は二地域居住の概要や、地方自治体と地元企業が展開する二地域居住推進サービスについて解説していきます。
二地域居住とは
二地域居住とは、都会に住む人が多様なライフスタイル実現のために田舎にも拠点を構え、双方を移動しながら生活していくことを言います。完全に地方に移住する地方移住と異なり、都会にも仕事のための拠点を残すので安定した収入を得ながら地方での生活を楽しむことができます。近年はテレワークによって地方移住最大のハードルであった「仕事」や「収入」に関わる課題を解決できることから、多くの人が二拠点居住を検討していると言われています。
政府が推進する二地域居住
従来から地方創生を進めている政府も、テレワークを活用した二地域居住を推進しています。テレワークの活用によって地方移住のハードルが下がり地方への移住者が増えれば、地域経済の発展や地域活性化、少子化防止、過疎化防止にもつながっていくからです。また多様な働き方や生活を支援することにより、働く人々のワークライフバランスも実現することができます。
地方自治体や地元企業も本腰を入れている
また政府だけでなく当事者である地方自治体や地元企業も、テレワークを活用した二地域居住者の誘致に本腰を入れています。政府もこれからの日本の大きな問題と認識しているように、少子高齢化や過疎化、地域経済の不活性化は地方にとっても大きな問題です。都会への一極集中が続き地方の人口が減り続ければ、地方自治体は税収が減り、さまざまな行政サービスを行えなくなります。そうなると、ますます地方からの人口流出が増えるという「負のスパイラル」に陥ってしまうのです。
政府の推進する地方創生は、国と地方が一緒になって「定住人口」と「関係人口」を増やしていこうとする施策でもあります。定住人口とは、その地域に元から居住する人たちと移住によって定住した人たちを指します。関係人口とは、その地域と多様な関わりをもつ人々のことで、地域に愛着や特別な思いを持つ人たち、また二地域居住を行う人たちもここに含まれます。※通勤・通学、観光・レジャーなど、何らかの目的を持ってその地域を訪れる人たちは「交流人口」といいます。
関係人口を増やすことは定住人口を増やすことにつながり、地域が活性化すれば交流人口も増えていくことになります。また交流人口が増えれば関係人口が増えることにもなり……とこれらは互いに影響し合う関係です。このようなことから、地方自治体や地元企業は関係人口を増やすためさまざまなアピールを行っています。
地方自治体や地元企業が展開する二地域居住推進サービス
・地域や生活に関わる情報の発信
地方自治体や地元企業のホームページなどで二地域居住を行う人たちを紹介し、新しいライフスタイルの提案を行っています。たとえば長野県では、二地域居住の方法を「テレワーク型」、「別荘型」、「単身赴任型」などに分け、それぞれの実例や実践者の紹介をしています。また地元の不動産業やホテル業が長期滞在者向けの情報発信を行ったり、インフルエンサーやお笑い芸人を使った地方移住体験の発信なども実施されています。
・移住相談窓口の設置
以前から都会や県庁所在地に移住の相談窓口は設けられていましたが、近年では個人向けではなく企業向けの相談窓口も設けられるようになってきています。近年ではコスト削減や働き方改革のためにサテライトオフィスの設置を検討する企業も増えているので、地方進出のニーズに応える相談窓口が必要になっているのです。
・サテライトオフィスやコワーキングスペースの設置
上記のような企業及び個人の要望に応えるため、地方自治体や地元企業がサテライトオフィスやコワーキングスペースの設置を行う例も増えています。サテライトオフィスは企業の本社や支社から離れた場所に設置される小規模なオフィスですが、企業が自ら設置するほか、地方自治体などが建物やスペースをレンタルすることも多くなっています。
またコワーキングスペースは、個人事業主や企業の従業員がオフィスの基本設備(ミーティングルームやオンライン会議室等)を共有しながら仕事をする場所のことで、移住した自宅で作業ができない場合などに活用されます。
・移住のきっかけとなるイベントの実施
上記のようなサテライトオフィスやコワーキングスペースの設置も移住のきっかけとなりますが、移住体験や就農体験なども移住の判断材料となります。各地方自治体では数日から数週間の移住体験を用意している場合が多いので、その地方の風土や気候、コミュニティーなどを事前に体験することができます。
まとめ
政府や地方自治体は、二地域居住を「その地域を知ってもらい移住へのきっかけとなるもの」だと考えています。以前は都会が「主」で地方が「副」であった二地域居住の関係性が、テレワークの普及を機に逆転しはじめているからです。IT技術の発達によってハードルが下がった二地域居住は、今後地方創生のカギとなっていくことでしょう。