政府は地方創生のためにさまざまな施策を行っていますが、その施策の中には移住者を支援する助成金や地方自治体と共に取り組む地方活性化策があります。中でも地域活性化の要(かなめ)と言われているのが、関係人口の創出策です。関係人口とはどのような人口で、この人口が増えることによって地方創生にどのような影響があるのでしょうか?今回は関係人口の概要から地方創生との関係、また関係人口を増やす重要な施策といわれている地域のファンクラブについて解説していきます。
関係人口とは?
「関係人口」を大きなくくりで定義するならば、その地域や地域の人々と多様に関わる人々ということになります。たとえば、その地域に強い愛着を持っている人やその地域にルーツ(両親や親戚、友人が住んでいる等)のある人、その地域に住んでいる人と深い交友関係があり頻繁にその地域を訪れている人などが関係人口に分類されます。ではその地域に観光で訪れたり、地元の食材をネット販売や道の駅で買ったりする人も関係人口に含まれるのでしょうか?
●交流人口と定住人口
実は観光でその地域を訪れたり地元の食材を通販で買ったりしている人は、関係人口ではなく「交流人口」に含まれます。関係人口と交流人口の区分けは、その地域に「強い愛着」や「深い交友関係」を持っているかどうかです。つまりその地域との「強いつながり」が関係人口と交流人口を分けるのです。ですからその地域に頻繁に通っていても、通勤や通学で通っている人は関係人口には含まれません。
一方、古くからその地域に住んでいる人や移住した人は「定住人口」に分類されます。政府はこの3つの人口のうち、関係人口を創出することが地域活性化につながると考えているのです。
関係人口創出は地域の活性化につながる
ではなぜ関係人口の創出は地域活性化につながるのでしょうか?普通に考えれば、地域の活性化を担うのは、その地域に住んでいる人たちや地方自治体となるでしょう。ただし地域に住む人だけでなく、地域に居住していない「地域外の人々」に対しても地域活性化の担い手としての活躍を促すことでも地域の活性化は実現します。つまり政府は、関係人口を増やすことで地方創生の当事者を最大化し、より大規模な地域活性化につなげようとしているのです。
また関係人口を創出することは単に地域活性化の担い手を増やすだけでなく、地域住民との交流が増えることで、イノベーションや新たな価値が生まれることも考えられます。加えてこのような関係性が発展していけば、将来的な移住者の増加にもつながり定住人口が増えることも期待できます。
●関係人口創出の取り組み
では関係人口創出の取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか?
▷ 地方公共団体への支援
関係人口と地域との継続的な協働事業や地域活性化に取り組む地方公共団体へ、人的支援や助成金支給、情報展開等の支援を行っています。
▷ ふるさとワーキングホリデーの推進
ふるさとワーキングホリデーは、総務省が中心となって2017年度にスタートさせたワーキングホリデーのプログラムです。このプログラムでは、都市部に居住している若者が2週間から1ヶ月程度の期間、働きながらその地方に滞在し休日は自由な時間を過ごすことができます。その地域の生活を体感しながら関わりを深めてもらい、いずれは関係人口となって貰うことを目的としています。
▷ 農家民宿や古民家等の整備
農家を整備して民宿(農泊)として利用できるようにしたり、古民家を修繕してさまざまな交流プログラムを開催できるようにしたりと、地元の資源を積極的に活用して関係人口を増やす取り組みを実施しています。
▷ 農山漁村体験の充実
小・中学生の農山漁村体験や高校生の地域留学、移住希望者の移住体験など、さまざまな地方体験のプログラムを用意し、将来的な関係人口の創出を行っています。
▷ 関係人口ポータルサイトの充実
上記のような活動の他に、総務省では関係人口ポータルサイトを開設し関係人口を創出するためのさまざまな活動を紹介しています。このポータルサイトでは国が主導している各種活動の他に、各地方自治体が発足させている地域ファンクラブのサポーター募集情報なども掲載しています。
地域のファンクラブで関係人口を増やす
ではいったい、各地方自治体が発足させている地域ファンクラブとはどのようなものなのでしょうか?地域ファンクラブとは、特定の地域を応援する域外のサポーターの集まりで、サポーターにその地域の魅力発信や企画提言、イベントなどへの参加をしてもらい、その地域を盛り上げることを目的に発足されたものです。地域ファンクラブのサポーターとなってくれる人たちは、その地域に強い愛着や関係を持つ人が多いので地域ファンクラブのサポーターを増やすことは関係人口の創出となるのです。
●地域ファンクラブの事例
たとえば福島県の地域ファンクラブ「ふくしまファンクラブ」では、入会金・年会費無料で常時会員(サポーター)を募集しており、会員になるとメールマガジンやSNSで福島の旬の情報が送られてくるようになります。また会員証を提示すれば割引やサービスを受けられる施設が県内外300カ所以上に用意されており、ファンクラブの特典で福島の魅力を存分に楽しむことができます。
また神奈川県にある藤沢市では「ふじさわファンクラブ」を設置して藤沢市の魅力を発信しています。こちらも入会金・年会費無料で入会でき、2022年4月現在での会員数は5,000名以上。会員になるとSNSやメールなどで地元の紹介や各種イベントの案内が送られてくるようになり、藤沢市の魅力を今まで以上に知ることができます。
まとめ
関係人口とは、その地域に強い愛着を持っている人やその地域に住んでいる人と深い交友関係がある人たちを指します。このような人たちを増やし、将来的に移住してもらうためには、まず情報発信を行ってその地域の魅力を知ってもらうことが重要なのです。
<参考>
地方公共団体向け二地域居住等施策推進ガイドライン
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chisei/content/001491148.pdf
関係人口の創出・拡大について
https://www.chisou.go.jp/sousei/meeting/tihousousei_setumeikai/pdf/r02-07-21-shiryou8.pdf
総務省モデル事業の取組事例 総務省「関係人口創出・拡大事業」(平成30年度〜令和2年度)
https://www.soumu.go.jp/kankeijinkou/model_list.html
関係人口とは?地方創生に重要な人々と創出や拡大について解説
https://tailorworks.com/column/03/