2024年にはコロナ前の水準に!インバウンド需要の回復は地方を活性化させる?
GLOCAL MISSION Times 編集部
2023/05/31 (水) - 19:00

新型コロナの世界的な感染拡大により、日本はもちろん世界中の観光産業は大打撃を受けました。観光庁の統計 によれば、2019年に3,188万人だった訪日外国人旅行者の数は翌年の2020年には412万人に、政府の水際対策が一番厳しかった2021年には25万人となりました。実にピーク時の120分の1以下となってしまった外国人旅行者の数は、2022年後半になって水際対策が緩和され急激に回復しはじめています。外国人旅行者の増加は、日本の経済と観光産業に大きな影響を与えると言われていますが、地方活性化にはどのような影響があるのでしょうか?今回は増えるインバウンド需要と、地方活性化の関係について紹介していきます。


インバウンド需要とは?

インバウンド需要とは、日本に訪れた外国人の国内サービスへの需要を表します。この外国人の需要に対してサービスを供給すれば、日本国内に「お金が落ちる」こととなり経済が活性化します。インバウンド需要はインバウンド市場や訪日外国人旅行市場とも呼ばれ、ここで落ちたお金を「着地消費額(訪日外国人旅行消費額)」といいます。着地消費額とは外国人が日本に旅行し、宿泊や食事、おみやげ購入、記念品購入、オプションツアー参加などに使ったお金すべてを指します。インバウンド需要が旺盛になれば、着地消費額が増えると考えれば良いでしょう。

●コロナで激減したインバウンド需要

新型コロナ感染拡大による水際対策で外国人入国者が減り、一番打撃を受けた国内産業は観光産業です。もちろん日本人の移動も減ったため観光産業は打撃を受けましたが、中国人の「爆買い」に代表されるような大きな額の着地消費額がコロナによってゴッソリと消えてしまったのです。新型コロナ感染拡大前の訪日外国人の数は7年連続して増えており、それに伴ってインバウンド需要も旺盛に推移していました。観光庁の統計 によれば、2019年の着地消費額は4兆8,135億円で過去最高を記録。この額が2020年には7,446億円になり、2021年は1,208億円まで減ってしまいます。新型コロナの感染拡大によって、インバウンド需要は激減したのです。


規制の緩和で回復するインバウンド需要

2022年の後半から政府の水際対策は徐々に緩和されてきましたが、2023年前半にはこれが大幅に緩和されます。2022年9月時点の訪日外国人数はコロナ前の-90.9%でしたが、2023年1月には-44.3%(共に2019年同月比)まで回復。2023年5月以降に計画されている大幅緩和で、さらに弾みがつくものと期待されています。

訪日外国人が増えるとさらに期待されるのは、インバウンド需要の回復に伴う着地消費額の増大です。着地消費額は、大きくモノ消費とコト消費に分けることができます。モノ消費とは言葉通り、訪日外国人がみやげ物や記念品、食事などの「物(モノ)」を消費することで、コト消費とは魅力的な景勝地や観光地で、サービス(宿泊やオプショナルツアー)や時間(街歩や各種アクティビティなど)を消費することを意味します。

モノ消費は比較的都心部や都心部にある観光地で行われることが多く、コト消費は地方の観光地で行われることが多いと言われます。規制緩和で増えつつある訪日外国人に地方でコト消費をしてもらうために、政府と地方自治体は既に動きはじめています。


■インバウンド需要の回復が地方活性化のカギ

政府は日本国内に11のモデル観光地を設定し、訪日外国人の中でも高付加価値旅行者と呼ばれる、着地消費額が100万円を超える旅行者の誘致を率先して行っていく考えです。11のモデル観光地は、以下の通りです。

・東北海道エリア
 手つかずの大自然が残る、北海道の東側(道東)のエリア。
・八幡平エリア
 秋田県と岩手県にまたがる山と、その周囲の高原台地のエリア。
・那須及び周辺地域エリア
 日本有数の広大な扇状地であるエリア。
・松本・高山エリア
 日本の尾根が抱く森、雪、溢れる水と共にある豊かな生活があるエリア。
・北陸エリア
 新潟、富山や能登半島を含むエリア。
・伊勢志摩及び周辺地域エリア
 三重県南東部の、伊勢国と志摩国にまたがるエリア。
・奈良南部・和歌山那智勝浦エリア
 世界的な観光地・奈良を有するエリア。
せとうちエリア
 日本で一番大きな波の静かな穏やかな内海(せとうち)のあるエリア。
・鳥取・島根エリア
 出雲神話や古事記など日本古来の神話の舞台となったエリア。
・鹿児島・阿蘇・雲仙エリア
 世界有数の火山と共にある信仰や営みが調和したエリア。
・沖縄・奄美エリア
 日本の中でも独特の文化と自然を持つエリア。

モデル観光地は今後も追加を検討している地域があり、これらのモデル観光地には宿泊施設の整備や専門家の派遣、観光ガイドの人材育成などが集中的に支援される計画になっています。これらの地域に訪日外国人が訪れコト消費を行ってくれれば、地方の経済は必ず活性化します。また良い評判はSNSや外国人向けのガイドブックでも紹介され、永続的にその地方に活性化をもたらしてくれることでしょう。


まとめ

もう1点、訪日外国人の着地消費額を押し上げる要因は円安です。円安によって日本へ旅行することに割安感が生まれ、外国人は日本でモノ消費やコト消費を行いやすくなっているのです。水際対策の緩和によって訪日外国人は大幅に増えることが予想されています。円安とインバウンド需要の増加。この機を逃さずぜひ地方活性化に役立てたいものです。



<参考>
2023年のインバウンド需要は4.96兆円と早くもコロナ前を上回る予想
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2023/fis/kiuchi/0221_2

【2023年】インバウンド需要の気になる今後の再開見通し・回復予測を解説!
https://www.submit.ne.jp/shutto-translation/column/inbound_2023#a3

わが国のインバウンド需要に本格回復の兆し ― 2023年のGDPを0.4%押し上げ ―
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=104267

高付加価値旅行者の誘客に向けて集中的な支援等を行うモデル観光地11地域を選定
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news03_000235.html

高付加価値旅行者の誘客に向けて集中的な支援等を行うモデル観光地11地域を選定
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001599031.pdf

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