政府が都内大卒の地方移住を支援!移住支援金制度を拡充するその狙いとは?
GLOCAL MISSION Times 編集部
2023/07/11 (火) - 12:00

日本国政府は2023年6月15日、地方移住を促す支援金(移住支援金)の支給対象を拡大する方針を固めました。地方から東京23区内にある大学に入り、卒業した学生が地方で就職する場合に支援金を支給するというものです。この制度改革には、地方で就職する若い世代を支援金制度の対象に加えることで、東京一極集中の是正につなげると同時に経済支援を通じた少子化対策を行う側面もあります。今回は支給対象拡大の概要と、その目的などについて解説していきます。


都内大卒の地方移住を支援

冒頭でも書いたように、従来から政府が行っていた移住支援金制度の支給対象が拡大されます。地方から上京して東京23区内にある大学に入り、4年間の学生生活を経て卒業した学生が対象で、この学生が地方で就職する場合に国から(実際には地方自治体が)支援金を支給するというものです。
従来この移住支援金は、東京23区内に在住または東京圏(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県、条件不利地域を除く)から東京23区へ通勤していた人が地方移住する際に支給されていたものです。以前は既に勤務実績がある人が対象となっていたのですが、今回は卒業して地方移住する新卒にもこの制度が適用されることになったわけです。
政府はこの対象拡大について、「東京一極集中に歯止めをかけるには、Uターンなどにつながる移住支援の一層の充実が必要と判断した」としており、地方の少子高齢化や過疎化が待ったなしの状態になっていることがうかがえます。この支援金の予算は2024年度予算の概算要求に盛り込まれ、具体的な支給額や対象者の範囲は今後詳細を詰める、とされています。


移住支援金制度とは?

もともと移住支援金とは、地方での雇用創出や地方創生施策の一環として設けられたもので、あらかじめ定められた条件を満たすことによって支給を受けられるものです。支援金の額は、単身の場合は60万円以内で地方自治体が設定する額。世帯の場合は100万円以内(ただし18歳未満の世帯員を帯同して移住する場合は、18歳未満の者一人につき最大30万円を加算)となっています。また移住支援金を受給するためには、以下の条件をすべて満たさねばなりません。

●移住支援金受給の条件

移住直前の10年間で通算5年以上かつ直近1年以上、東京23区内に在住または東京圏(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県、条件不利地域を除く)から東京23区へ通勤していた人が対象。またこの期間内に学生の期間が入っている人は、通学期間も対象期間に加算できます。ただしこれは、東京圏(条件不利地域を除く)に在住しつつ、東京23区内の大学等へ通学し東京23区内の企業等へ就職した人に限られます。
また地方での就業にも条件があり、以下のいずれかを満たすことが必要です。

◯ 地域で中小企業等へ就業する場合
移住支援金の対象として都道府県のマッチングサイトに掲載されている求人に就業すること。または、プロフェッショナル人材事業または先導的人材マッチング事業を利用して就業すること。

◯ テレワークによる業務継続の場合
自己の意思によって移住し、移住先で移住前の業務を引き続き行うこと。

◯ 地方自治体ごとの独自要件
地方自治体が地域や地域の人々と関わりがある者(関係人口)として認める要件を満たすこと(要件の内容は地方自治体によって異なる)。

これらの申請に関しては、移住支援金の申請が転入後3か月以上1年以内であること。申請の条件として申請後5年以上、継続して移住先市町村に居住する意思があることも求められます。このように移住支援金を受け取るには、実はさまざまな条件をクリアーしなければならないのです。


そのまま都内で就職した学生は地方に帰りにくい?

今回の拡大策の背景には、一度都内で就職した学生はなかなか地方に帰りにくいといった事情もあるようです。確かに新型コロナ感染症の影響でテレワークが普及し、遠方からでも仕事ができる環境が技術的には整いました。ただし未だにテレワークでの勤務を認めていない企業もありますし、そもそもテレワークができない職種(接客業や医療福祉関係など、対人対応が必須の職種)も存在します。このような職種に就職しようとする学生ならば、前もって地方に就職しやすくしてしまおうというのが、今回の拡大策の狙いにも思えます。いずれ発表される支援金の受給条件次第ですが、現在都内の大学に通う学生さんにとっては、就職先の選択肢が増えることになりそうです。


まとめ

今回の対象者拡大の支給条件がどのようなものになるのかは、まだわかっていません。ですが、今回の拡大策に現在の移住支援金の支給条件と同じような厳しい条件が課されるとすれば、その効果は限定的にも思えます。本当の意味で異次元の対策を行うのであれば、利用しようとする人がわかりやすく、使いやすい制度にしなければならないでしょう。



<参考>
都内大卒の地方移住を支援 一極集中是正へ支援金の対象拡大
https://www.tokyo-np.co.jp/article/256920

地方創生移住支援事業の概要
https://www.chisou.go.jp/sousei/ijyu_shienkin.html

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