地方創生に必要不可欠な外国人材の活用/地域活性機構 リレーコラム
亀和田 俊明
2018/07/20 (金) - 08:00

訪日外国人観光客が年々増加する中、コンビニエンスストアや飲食店など身近な場所でも接客を通じて外国人に触れあうことが日常的になっていますが、人口減少社会に向け大都市圏はもちろん、地方都市でのさまざまな場面で期待されている外国人労働者の現状と課題から地方創生の視点で可能性を考えてみたいと思います。

5年前に比べ2割増の在留外国人は労働者数も過去最高

コンビニエンスストアでは学びながらアルバイトをする留学生が急増しており、都市部では店員の大半が留学生という店も珍しくありません。大手3社では全国の店舗で働く外国人従業員は、全従業員の5~7%程度といわれます。少子高齢化が進む我が国では人手不足が深刻化してきており、建設業での人手不足に始まり、介護、サービス、配送など多様な現場で悲鳴が上がっており、女性の雇用拡大や高齢者の活用だけではとても対応できない状況でもあります。

そこで、存在感を増す外国人の労働力をさらに活用すべきだという声も高まってきています。この20年で100万人余り増えている在留外国人は、2017年末の法務省の調べによれば、256万1,848人となり、前年末に比べ、17万9,026人(7.5%)増加し、過去最高となりました。 外国人の人数や増加率も今までにない数値、幅となっています。前述の深刻な現場など9年連続で減少している日本人の労働力不足を外国人が補う構図が強まっているといえます。

2012年に外国人登録制度が廃止され、各市区町村の住民基本台帳に登録されるようになったことで日本に暮らす外国人の在留状況が正確に把握できるようになりましたが、5年前と比べ外国人は2割増えており、国・地域別で最も多いのは中国人の73万890人で、以下、韓国、ベトナムと続き、特にベトナム人の急伸が顕著であり、対前年比でも3割増となっています。また、留学生も2012年度の16万1,848人から2017年度には26万7,042万人に増加しています。

一方で、2017年10月末時点での外国人労働者数も前年同期比で19万4,901人(18%)増加し、127万8,670人となり、過去最高を更新しました。増加した要因としては、政府が推進している高度外国人材や留学生の受け入れが進んでいることや雇用情勢の改善が着実に進み、「永住者」や「日本人の配偶者」等の身分に基づく在留資格の外国人の就労が増えているほか、「技能実習制度」の活用が進んでいること等が背景にあると考えられます。

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外国人の就労促進のために新たな在留資格つくる

我が国では、人口減少に伴い15~64歳の生産年齢人口も減る中、若年層の日本人労働力が不足している外国人を活用したいという企業も増えていますが、これまで政府は単純労働を就労ビザの対象にせずに、技能実習生や留学生といった期限を設定した労働力として受け入れてきました。今後、政府は外国人労働者の受け入れを拡大するために新たな在留資格をつくる方針といいます。

さて、現在の在留資格別にみると、定住者(主に日系人)や永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者等の「身分に基づく在留資格」が外国人労働者全体の35.9%を占め、次いで留学生のアルバイト等「資格外活動」、技能移転を通じた開発途上国への国際協力が目的の「技能実習」、就労目的で在留が認められる「専門的・技術的分野の在留資格」の順で続いており、いずれも前年を上回っています。

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また、産業別では外国人労働者、外国人労働者を雇用する事業所ともに製造業が最も多く、製造業は外国人労働者数全体の30.2%、外国人労働者を雇用する事業所全体の22.2%を占めていますが、製造業の構成比は前年に比べ減少しています。その反面、建設業及びサービス業(他に分類されないもの)の構成比は外国人労働者、外国人労働者を雇用する事業所ともに増加傾向にあります。

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一定の専門性・技能水準と日本語能力を条件に、外国人就労に門戸をひらくものとみられますが、外国人材の受け入れが必要と認められる業種としては、農業、介護、建設、宿泊、造船などが想定されています。今後、政府は受け入れ業種の検討や在留管理体制の強化、日本語教育の強化等の受け入れ環境の整備を進めていくなど具体的な検討に入ることになりますが、ただし、滞在は最長でも5年にとどまるとみられます。

18年度の地方創生の基本方針で外国人材の活用掲げる

6月に「地方創生」の2018年度の基本方針がまとまり、発表されました。「地方創生」については、2014年末に政府が総合戦略をまとめ、2015年度から5ヵ年計画として始まりました。2018年度の基本方針として、「わくわく地方生活実現政策パッケージ」によれば、首都圏から地方への移住者への支援、地方で暮らす女性や高齢者への支援と並んで外国人の活用を挙げており、留学生が日本で就労する際の在留資格の変更手続きなどを簡素化する考えもあります。

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インバウンドや地元産品輸出の拡大の活発化、在留外国人の更なる増加に伴う多文化共生の充実等により、地方公共団体においては外国人材の活用ニーズが高まることが見込まれていますが、在外の親日外国人を掘り起こしマッチングする仕組みの構築と地方公共団体等における外国人材が多様な活動ができるようにするため、包括的な資格外活動許可を新たに付与するという二つの施策を講ずることにより地方における外国人の活用を図ろうとしています。

さらに、日本の大学等を卒業した外国人留学修了者が配偶者の就労や親の帯同が可能となる在留資格(高度専門職)の要件緩和。その専門能力を十分に発揮できるよう高度人材ポイント制の拡充や就労時の在留資格変更手続きの簡素化。と同時に初中教育が12年未満の国・地域からの外国人留学生の受け入れへ大学入学資格の緩和。また、外国人材の地域でのさらなる活躍を図るとともに地域における多文化共生施策を一層の推進が考えられています。
※高度専門職=高度学術研究活動、高度専門・技術活動、高度経営・管理活動

日本に定住して働く外国人も増えていますが、都市部だけでなく地域おこし協力隊として従事することで地方の活性化に貢献してもらうことも考えられており、2017年の4,976人からシニア層や青年海外協力隊経験者のほか在住外国人等にも応募者の裾野を拡大し、6年後には8千人へと拡充することを目標としています。隊員の約6割は同じ地域に住み続け、定住した約3割は自ら起業するなど地域で新しい仕事を作り出しているだけに外国人の活躍が期待されます。

「高度人材」の呼び込みで地方にイノベーションを

地方を訪れる外国人客だけでなく、地方で働く外国人も増えていますが、首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)、関西圏(大阪・京都・滋賀・兵庫・奈良・和歌山)、中京圏(愛知・岐阜・三重)以外の地方都市に住むのは約77万人です。外国人の活躍の場が地方にも広がっていますが、欧米豪などから押し寄せる北海道のスキーリゾート・ニセコ町のように、訪日客をもてなす経営者や従業員にも外国人が増え、人口の減少を緩和する例もみられます。

また、「国家戦略特区」を活用した外国人労働者の受け入れも注目されてきています。大阪市では実際に家事代行・家事支援サービスでフィリピンから受け入れが始まっています。特区であれば農業支援など自治体やその地域で力を入れていきたい分野で受け入れが可能になりますし、地方創生を外国人が支えてくれることになります。この制度を利用する動きはこれから全国に徐々に広がっていくのではないでしょうか。

在留資格の中で、「留学」と「専門的・技術的分野」は、人口が多い大都市圏で急増していますが、技能実習は人口の少ない地域が顕著です。今後、今まで少なかった地方都市へ医師や教授など「専門的・技術的分野」の高度人材の外国人を呼び込む努力を重ねる必要があります。生産性を高めてイノベーションを起こすには、高度人材の活用が欠かせません。働きやすさの観点から外国人に地方の魅力を効果的に発信していくことも重要と思います。

最後に今後、外国人の受け入れが拡大し、在留する外国人が増えていく中で、単なる労働力ではなく、外国人を地域社会の構成員として捉え、そのための多文化共生の地域づくりの推進が必要かと思われます。数多くの海外の国から働く場、住む場として日本を選択する外国人に真摯に応えるためにも就労上、制度上、社会的課題なども含め住みやすい環境づくりが必要といえます。

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