『田舎暮らしの本』(宝島社 発行)が発表した2017年度版日本「住みたい田舎」ベストランキング。総合ランキング1位は鳥取市(鳥取県)、2位は豊後高田市(大分県)、3位は南砺市(富山県)でした。選ばれたトップ3の自治体の取り組みとは?キーワードは、「体験型」と「補助金」です。
1位 鳥取市 移住者数は全国の市町村中2位
鳥取県鳥取市の人口は2017年1月末現在19万879人。県庁所在地である鳥取市には、有名な鳥取砂丘があります。ショッピングモールやホールなどもあり、公共交通が整備されています。また、鳥取市では保育園の園庭の芝生化を進めています。
鳥取市では、2006年9月から2015年12月末まで移住のための窓口「鳥取市定住促進・Uターン相談支援窓口」を開設していました。その間に移住したのは、910世帯1,812人。2015年4月から10月までの「移住者の受け入れ人数」は、106組192人で全国487市町村中2位となりました。
今後さらなる移住定住の支援の取り組みを行うため、2016年1月10日“移住の日”に、「鳥取市移住・交流情報ガーデン」を設置。Jターン、Uターンを含む3人の「移住定住コンシェルジュ」が、鳥取市への移住希望者に対する相談対応や情報発信を行っています。
その土地で体験することが、その土地を知る早道かもしれません。そのため、体験プランを提供する自治体が増えています。
鳥取市では、1日1組3人限定の「鳥取体験ガイド」があり、「仕事探しプラン」「住まい探しプラン」「子育て環境体験プラン」など8つのプランを用意しています。プランを選んで事前申し込みすれば、ガーデン移住定住コンシェルジュが案内します。
そのほかの施策としては、鳥取市への就職や定住を支援するために、「首都圏・関西圏移住定住相談員」の配置をしています。
鳥取市公式のサイト「鳥取市空き家情報バンク」には、移住用の住宅専用のページが設置されています。鳥取市の「自慢」を写真で紹介する「すごい!鳥取市」のサイトもあります。
鳥取市の移住者数が増えているのは、積極的な情報提供、支援体制の整備など、市としての取り組みが要因の一つとなっているようです。
2位 豊後高田市 田舎暮らしプログラムでリアルな移住体験
大分県豊後高田市の人口は2017年1月末現在2万3106人。国東半島の北西部に位置し、温泉も堪能できます。写真は、ユネスコ未来遺産に選定された1,200年前の荘園の景観が残る「田染荘(たしぶのしょう)」です。
「住みたい田舎」ベストランキング総合部門5年連続でトップ3に入り、シニア部門では堂々の1位となりました。
豊後高田市の「IJU(いじゅう)支援サイト」では、移住に関するさまざまな情報を発信しています。
これから豊後高田市に移住を考える人にとって参考となるのが、移住した先輩の生の声、体験談ではないでしょうか。「20年前にIターンを行ったイチゴ生産農家の夫婦」「滞在型農業体験施設を利用後に沖縄県から移住した夫婦」など、約50組の体験談が掲載されています。
「空き家バンク」では、市内にある空き家や宅地の有効利用を通して、移住を希望する人に空き家などの情報提供をしています。「ペット可物件」「海の近くの物件」「農地付き物件」など条件から選ぶことも可能です。
移住となれば必要なのは、仕事の情報。豊後高田市の求人情報「HOT NAVI」では、ハローワークインターネットサービスの情報をもとに豊後高田市の求人のみを公開しています。
移住を決める前に、豊後高田市で生活を体験できるプログラムも用意されています。「緑豊かなコテージで田舎散策。“半住半旅(はんじゅうはんりょ)“田舎暮らし体験inヴィラ・フロレスタ」「『土間と土壁』の省エネ住宅。田舎でもっとエコライフ」「天空の空き家で農村生活“お試し”居住体験」など。まずは田舎暮らしを体験することから始めてみても良いかもしれません。
3位 南砺市 移住者が定住するための補助金が充実
富山県南砺市の人口は2017年2月1日現在、5万2389人。南砺市には、1995年世界遺産に登録された合掌作りの集落、五箇山もあり、自然あふれる農村が多いのが特徴です。
過疎化に悩む地方の農村部は増えていますが、南砺市では移住や起業を支援する市の定住奨励金制度を積極的に実施していることもあり、2016年度は半年間で61組114人が移住してきました。
移住者のための支援も積極的に行っています。
まず「転入奨励金」。 市外居住者が、市内に定住を目的として住宅用地と住宅を取得し、入居した場合に交付されます。
具体的には、5年以上市外に居住している人が転入して住宅を購入する場合、新築住宅で100万円、中古住宅で60万円が支給され、申請者を除く世帯員一人につき5万円が加算されます。
次に起業家への支援「起業家育成支援事業補助金制度」です。
補助対象の条件であれば、事業所等開設の際に1事業所300万円、事業所の賃借料として最長3年間1事業所月額2万5千円が補助されます。また、販売促進のための展示会参加費用などが年度内1回に限り40万円が支給されます。
また、南砺市は恒常的に不足する介護人材の確保を図るため、「介護人材受入宣言」を行い、富山県介護福祉会と連携して、首都圏等からの介護人材の移住受入れを積極的に行い、安定的な介護事業の推進と移住人口の増加に努めています。
総合ランキング1位から3位までトップ3の自治体が行っている移住者受け入れの施策をみてきました。それぞれ体験型プログラムや移住者への補助金のサポートなど体制を整えることで、移住者にとって魅力的な取り組みになっていることがわかります。 他の自治体にとって参考になることがありそうです。その土地の特色を打ち出し、移住者にとってうれしい施策があれば、人口流入の増加につなげることができるかもしれません。
(2017年3月22日)