広島県福山市は地方自治体として初めて、兼業・副業限定で同市の戦略顧問を募集すると発表しました。公募は即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」のサイト上の特設ページ上で、2017年11月15日から12月12日まで行われます。11月15日に実施された戦略顧問公募に関する記者発表会の模様を取材しました。
公募の背景‐株式会社ビズリーチ地方創生支援室 加瀬澤良年氏
記者発表会は株式会社ビズリーチ地方創生支援室チーフプロデューサー加瀬澤良年氏による「公募の背景」についての説明からスタート。同社は会員数102万人以上を誇る即戦力人材における日本最大級のダイレクト・リクルーティングプラットフォーム「ビズリーチ」を運営。2014年からは地方創生を掲げ、省庁や自治体向けの採用支援を行ってきています。
加瀬澤氏:政府は「働き方改革」をめぐる検討課題の一つとして兼業・副業といった働き方を議論し、推進している状況です。
ビズリーチ会員への意識調査の中でも、「今後兼業・副業を行ってみたい」83%、「首都圏以外の地域での兼業・副業に興味がある」75%と関心は高い結果になっています。地域での特殊な経験がしたい、労力ではなく知恵を提供したい、やりがい重視で考えたい「プロ人材」が多く登録されています。
その反面、中小企業庁の調査によると「兼業・副業を認めていない」企業が85%となっています。その主な要因としては「情報漏洩のリスク」「本業への影響」といったところがあげられています。
福山市と連日打合せする中で、自治体での兼業・副業という形であれば企業・自治体・登録プロ人材3者のWin-Win-Winが実現できると考えました。具体的には、企業側は情報漏洩のリスクが少なく、地方進出の足がかりが作りやすくなり、自治体も優秀な人材が得られ既存職員の意識改革につなげやすくなり、登録プロ人材も企業では得難い経験ができるでしょう。この取り組みが人材還流の新しいモデルとなることを目指しています。
兼業・副業プロ人材に期待すること‐広島県福山市長 枝廣直幹氏
続いて福山市長の枝廣直幹氏が登壇。戦略顧問公募への思い、今回の公募で兼業・副業プロ人材に期待することについて語りました。
枝廣氏:福山市は瀬戸内の中央に位置し、備後圏域の中核都市として発展してきました。全国的に人口減少社会が到来しつつある中、福山市も例外ではありません。市の人口は2010年には約46.1万人でした。しかし30年後の2040年には約39万人と7万人の減少が見込まれています。我々は、この人口減を3万人に食い止めることを目標にしています。
その目標を達成するためには、これまでの「変化をためらう」行政からの転換が必要だと考えています。福山市はこれまで「自前主義」で来てしまい、外からの眼に期待することなく政策を作り上げてきました。しかし、その自前主義がマイナスになりうると考えています。
行政の既存の考え方にとらわれない、今までにない発想を持ち課題を発見する力をプロ人材に期待しています。大きな権限を与え、部局を取りまとめるような環境を整備していきますので、ぜひ行政という立場で新たな経験をしてもらって、その経験を企業の場で活かすなど将来の働き方改革にもつなげていただければと思います。ぜひ皆様の力を貸してください。
今回の募集ポジションと求める人材像‐福山市企画財政局 中村啓悟氏
枝廣福山市長に続き、市企画財政局企画制作部長の中村啓悟氏から公募ポジションに求める人材像についての話がありました。
中村氏:福山市はフィンランドの先進的な出産・育児支援取り組みである「ネウボラ」を取り入れた「福山ネウボラ」を導入するなど、人口減少社会への対応を進めています。2015年時点の合計特殊出生率は全国平均(1.45)を大きく上回る1.70となっています。それでも、若者や女性、特に30~34才女性の転出超過が続く結果になっています。それはなぜなのか。分析等には外部の専門人材からの目線が必要だと考えています。
今回の募集ポジションは戦略推進マネージャーで、勤務は原則平日の週1日程度を考えています。市長との距離が近い中、権限がある中での戦略推進が可能となっています。行政の課題や現状を肌感覚で把握し、民間企業で働く人ならではの新たな視点を持っている方を求めています。的確なデータ分析やその結果を基にした提案ができ、多くの関係者を巻き込んだ調整や施策推進などプロジェクトマネジメントの経験がある方をお待ちしています。
質疑応答
3名の話の後は質疑応答に移り、地方自治体として初めての試みである「兼業・副業限定」である点に質問が集中しました。
‐なぜ「専業」という形ではなく、兼業・副業限定という形で募集することにしたのでしょうか。
枝廣氏:現場で責任をもって、あるいは経営にかかわりながら働いていらっしゃる人材に焦点を当てたいと考えたからです。始終一緒にいればいいというものでもないと思っています。週1回を原則にしているので、残った時間は色々なその方なりの作業をしつつ頭を整理していただき、次のタイミングでの議論進展に生かしていただけるのではないかと考えています。
‐今まであれば、コンサルティング会社やシンクタンクなどへの依頼、あるいは出向という形で任せるようなイメージがありますが、そのような形ではないのはどうしてでしょうか。
枝廣氏:そういったこともこれまでテーマによってはやってきています。ただ、今やっていない「兼業・副業プロ人材」にお願いすることは、福山市にとってのチャレンジだと思っています。民間企業に現役で働いているからこそというところを期待したいですし、そのような方をどうやって地方自治体と結びつけるかということは課題だと思っています。
参加者の声
記者発表会後には公募に関する説明会が開催され、ビズリーチ会員の方55名が参加されました。もともとの定員(20名)の10倍を超える応募があり、会員の方々の関心の高さを伺わせます。参加者からの声を参考までにご紹介します。
・長いキャリアを考えると、会社ではなく個人のキャリアを考えないといけない。個人として幅を広げていきたい。
・本業は金融関連なので、今回の件は本業にもって帰れると思う。
・金融やコンサルティング系の仕事をしている人は、本ポジションに興味を持つ人が多そう。
本内容をお読みいただき、興味をお持ちの方はビズリーチの下記ページより詳細をご確認ください。
https://www.bizreach.jp/content/481