移住を検討している人にとって、岡山市は候補の1つに入ることが多いのではないでしょうか。瀬戸内海に面し、年間を通して温暖な岡山市は、交通アクセスは便利で、経済も好調です。移住者にたいする積極的な支援も行っており、子育てや医療の環境も充実しています。この記事では、移住先としての岡山市をご紹介しますので、参考にしていただければと思います。
温暖な気候で交通も便利な住みやすい街
2020年11月現在、比較的落ち着いている岡山市でのコロナ感染状況。8月1日~31日まで実施された「PayPay」連携のポイント還元事業には、市内約5,900店舗が参加し、延べ約26万人、計35億7,000万円の利用がありました。ポイント還元額も4億6,300億円に上り、事業者向けアンケートによれば約5割の事業者が「売り上げが増加した」、約8割が「消費を促す効果があった」と回答し、大きな効果がありました。
さて、県庁所在地である岡山市を抱える岡山県は、ふるさと回帰支援センターが毎年発表する「移住希望地ランキング」で、2015年は5位、2016年は6位、2017年は7位と毎年上位に入っていました。ただし、2018年、2019年だけは21位以下の圏外です。また、全国のビジネスパーソンに「安心・安全」や「快適な暮らし」「生活の利便性」「医療・介護」「子育て」「街の活力」など8分野・38項目の質問し、住みやすい街のランキングを毎年作成している日経BP総合研究所の「住みよい街2019」によれば、岡山市は全国341市区中168位でした。
政令指定都市である岡山市は、周辺4町と合併したこともあり人口は約72万人です。2009年に北・中・東および南の4区が設置されました。南は瀬戸内海に面しており、北部はなだらかな台地がつづく吉備高原の一角です。瀬戸内海にそそぐ旭川と吉井川により形成された岡山平野に中心市街地があり、さらに南部は農地が広がり穀倉地帯となっています。
(資料:気象庁資料を基に筆者作成)
県庁所在地・政令指定都市である岡山市は、周辺地域の交通の結節点となっています。岡山市北部にある岡山空港には、国内便は東京・札幌・那覇の3路線、国際便はソウル・上海・香港の3路線が就航。岡山空港から市内中心部までは車で約25分と、陸上交通との連絡性も高くなっています。
(資料:岡山桃太郎空港旅客便利用実績を基に筆者作成)
(西日本旅客鉄道株式会社資料を基に筆者作成)
(岡山市HPより筆者作成)
卸売・小売業を中心に発展する経済
岡山市の地価は上昇傾向にあります。2020年の公示地価は、住宅地・商業地とも前年に引き続いて上昇しています。地価の上昇率は岡山駅近辺の中心部で大きく、郊外や海岸沿いのエリアでは下落している地点もあります。中心部で地価が上昇する大きな原因としてあげられるのは、2014年に岡山駅近くにイオンモール岡山店が出店したことです。魅力的な商業施設ができたことで、周辺地域の雇用が増え、岡山駅の利用者も増加しています。また、これまでは郊外に戸建の家を建てるのが一般的だったものが、駅周辺の利便性が高まったため、シニア層や共働き層を中心に、駅周辺のマンションにたいする需要が高まっていることも要因の一つといわれています。
岡山市は、全国の大都市のなかで、家賃の安さは第8位、平均通勤時間の短さは第5位、百貨店・総合スーパーの人口あたりの数は第2位、都市公園の人口あたりの面積は第2位と、暮らしやすい環境です。市民の満足度も高く、平成27年市民意識調査の結果によれば、岡山市民の8割以上が岡山市は「安全・安心」「岡山市に住み続けたい」と思っています。また、8割以上の市民が町内会へ加入し、まちづくりへの意識が高いのも特徴です。
岡山市の事業所数・従業員数は、1990年代を境に減少ないしは横ばい傾向にはあります。ただし、それでも全国の市町村別ランキングで、岡山市は事業所数では17位、従業員数では18位、付加価値額では19位の規模を誇ります。
また、旧制第六高等学校や旧制岡山歯科大学の伝統があることから教育・学習支援業も盛んです。教育・学習支援業の付加価値は18.4百億円で第2位であり、付加価値率としては53%で最大です。医療・福祉も盛んで、付加価値は14.6百億円で第4位、付加価値率は44%で第2位、個用も3.9万人で第2位です。
製造業に関しては、全国や海外で活躍する企業も多いことが特徴です。付加価値額は16百億円で第3位、雇用も3.3万人で第3位と、岡山市の主要産業の1つとなっています。
岡山市では平成28年度に「岡山市第六次総合計画長期構想」を、令和7年度までの10年間を期間として策定・実施しています。「未来へ躍動する桃太郎のまち岡山」を基本目標に、都市の将来像として以下の3つを掲げています。
1. 中四国をリードし、活力と創造性あふれる「経済・交流都市」
3. 全国に誇る、傑出した安心を築く「健康福祉・環境都市」
この長期構想に基づき、中期計画である「岡山市産業振興アクションプラン」なども策定され、中小企業の発展促進や市民生活の向上に力を入れています。
(資料:岡山市提供)
充実した子育て・教育環境や医療基盤
岡山市の転出者数、転入者数は下表の通り転出超過となっています。岡山市はもともと転出超過の傾向でしたが、東日本大震災の影響で2011年から大きく転入超過になりました。しかし、近年ではその影響が弱まっていると見られています。年齢別にみると、高校や大学などの進学時期にあたる18歳~23歳は転入超過となっており、それが大学卒業時を含む24歳で大きく転出超過になります。その後、20代後半から40代前半については、概ね転入超過です。
(資料:住民基本台帳人口移動報告より筆者作成)
移住者にたいする支援について、岡山市は積極的に行っています。2013年には移住を検討している人にたいする情報サイト「おかやま生活」を開設しました。おかやま生活には、移住先としての岡山の魅力や、仕事・住居・子育て・教育などに関する行政・民間の支援サービス情報、および移住者の体験談などが掲載されています。
岡山県は移住者支援のための政策「お試し住宅」も実施しています。お試し住宅は民間賃貸物件を活用したもので、補助対象期間は最長6ヶ月。補助内容は、上限額3万3,000円の家賃一部補助、上限額4万8,000円の仲介手数料補助、および上限額4万8,000円の家賃保証両補助となっています。また、県外からの移住者も対象となる県独自の職業紹介所「おかやま就職応援センター」も開設。田舎暮らしを促進するため「岡山県空き家情報流通システム」も運営しています。
子育てする環境としての岡山市は魅力的です。人口あたりの保育園数は全国第5位、幼稚園数は第2位、大学・短期大学数は第3位、文化施設数は第3位と、教育環境は充実しています。また、医療基盤も充実しており、人口あたりの病院数は第4位、医師数は第2位です。
(資料:岡山市HPより筆者作成)
岡山では、さまざまな子育て支援も行っています。子育てを応援するサイト「こそだてぽけっと」を開設。子育てに関するさまざま情報を掲載しています。また、子育てを応援するカード「ももっこカード」を発行。ももっこカードに協賛する施設・店舗での利用により、割引などが受けられます。3人以上の子供がいる場合にはさらにお得な優遇が受けられる「多子世帯用ももっこカード」もあります。
子供にたいする医療費の助成もあります。岡山市在住の子供は、外来については、小学校就学前は自己負担なし、小学生は自己負担1割で、自己負担額の上限は1ヶ月あたり4万4,000円です。中学生までは、入院に際する自己負担はありません。
森ビルのシンクタンクである森記念財団都市戦略研究所が2020年9月に発表した「日本の都市特性評価2020」では、対象となった109都市中、岡山市は22位でした。この調査は「経済・ビジネス」や「文化・交流」「生活・居住」「環境」など6分野のそれぞれで得点を算出し、総合店で順位を決めるものです。岡山市は、経済・ビジネスでは14位、研究・開発では15位と上位であるものの、交通・アクセスについての評価が低いとされ22位にとどまりました。温暖な気候の「晴れの国」岡山市。生活の利便性は高く、経済も好調です。地方都市への移住先を考える場合には、有力な候補地だといえるでしょう。