長野県諏訪郡富士見町は人口約14,000人(令和4年11月時点)。東に八ヶ岳、西に南アルプスを見渡せるロケーションで、標高は700~1,200メートルの高原となっています。新宿や名古屋など、都心へのアクセスが良好で、都市部で働きながら地方へ住まいを持つ二拠点生活を行う人が増えているのだそう。そのきっかけとなったもののひとつが、コワーキングスペース「富士見 森のオフィス」でした。
*この記事は2018年2月の取材に基づいた記事を編集したものです。
移住促進の起点として生まれた「富士見 森のオフィス」
「富士見 森のオフィス」は、富士見駅から徒歩15分ほどの森の中にある、個室型オフィス 、コワーキングスペース、会議室、食堂を備えた複合施設です。リモートワーカーの移住促進の拠点を目指し、富士見町が老朽化した大学の保養所を借り上げて大規模なリノベーションを行ったものです。
同施設のオープン時から委託運営を手がけながら、ビジネスサポーターの役割を担っているのがRoute Design合同会社です。
代表の津田賀央(よしお)さんは、東京の大手メーカーに3日間勤務しながら、2拠点居住生活の働き方を実践してきたといいます。一家で移住したのは2015年5月。7月には富士見で会社を登記しました。
「富士見は移住者がもともと多く、特急や高速バスを使えば、新幹線より安く都心と往復できます。この施設が作られたのは、都心と繋げてビジネスを創出し、利用者のプロジェクトを支援する目的もあります。単に空間や設備を提供するだけなら、ただの「箱」。人と人を繋げることで、そこから新しいビジネスや仕事のかたちを生み出されるのです。」と津田さんは語ります。
利用者は地元の人、移住者など様々。リモートワークをする会社員やフリーランス、冬場の事務作業に利用する農家の人もいるのだそう。
人と人を繋ぐ場所
広々としたコワーキングスペースは、会員であれば誰もが利用でき、パソコンを持ち込んで仕事をするのも良し、勉強するのも良し。もちろん、打ち合わせも可能。Wi-Fiのほか4Kモニター、プリンター(有料)なども利用でき、利用料は年間であれば35,500円(共益費込)とリーズナブルです。1日会員や10日間の回数券なども用意されています。
建物中央のコワーキングスペースを取り囲むように1階と2階には個室型のオフィススペースがあり、スタートアップのオフィスや遠隔地の企業のサテライトオフィス、会議室としても利用できます。食堂はセミナーやワークショップ会場に。
「コワーキングキッチン」は、料理を生業としたい方にとっての、食をテーマとしたキッチンタイプのコワーキングスペースです。「保健所から営業許可を得ました。製造所として使ってもらえれば、低いリスクで商品開発を始められます。生産者と製造者、両者が繋がる場所にしたかったのです。」
庭貸し切りサービスもあり、屋外イベントやテントやタープを張って企業合宿を行うことも可能になっています。
「様々な仕事に関わる相談を聞きます」という取り組みを発表したところ、ルバーブ農家のおじいちゃんが『ホームページをつくりたい』と相談にきました。オフィス利用者のデザイナーさんと“ものづくり補助金”を申請したところ見事に獲得しました。」
現在、「富士見 森のオフィス」は、4つの部屋と共有リビング、ウッドデッキ、キャンプサイトを備え、宿泊も可能になっており、移住を考えている人や二拠点居住者にも利用されています。その他、平日限定の親子ワーケーション・プログラムや連続講座プログラム「森の教室」、企業合宿プラン、移住相談などオリジナリティ溢れる多彩なサービスを展開しています。
(写真:砺波周平、インタビュー撮影:城田正明)