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北こぶしリゾート(旧 知床北こぶしグループ)は、世界遺産 知床半島の観光拠点に展開するリゾートホテル。昭和35年に知床グランドホテル(現「北こぶし知床ホテル&リゾート」。)を開業したのが始まりだと言います。2017年に3代目社長を引き継いだ桑島大介社長は徹底した業務の見直しからホテルを大改革に挑んできました。いかにして、成果をあげてきたのか、桑島氏に詳しくお話しを伺いました。
*この記事は2018年6月に公開された記事を編集したものです。
100年前に香川からウトロに入植
そもそも桑島家がウトロに営農入植したのは約100年前。桑島社長の曽祖父は家族とともに香川県から移り住み、農業を始めました。農業だけで食べていくのは困難で、道路が整備され人が増えたこともあり、祖父の代になり旅館(知床グランドホテル)を開業します。5室から始めた旅館は父へと受け継がれるなかで増改築を重ねていきました。
桑島社長はホテルを遊び場に育ったと言います。「ウトロという土地柄、スタッフにとってもホテルは仕事の場であると同時に生活の場。家族的な雰囲気を大切にしており、祖父は従業員から“父さん”と呼ばれ慕われていました。」
2017年6月、桑島社長は3代目として現職を受け継ぎ、弟の敏彦氏とともに経営改革に取り組みます。
「大学卒業と同時に、父(現会長)からの指令で、2年間石川県の山代温泉に修行に行き、旅館業の根幹を学ばせていただきました。山代温泉は年間を通じて来客数が多く、宿泊単価は知床に比べるとピーク時で1万円以上。その差に愕然としました。」
当時は今のようにオンラインでの宿泊予約ではなく、エージェントからの送客が8割以上だったことも、収益につながらない原因だったと言います。
知床に戻りホテル経営大改革
知床に戻った桑島社長は、フロント、予約、料飲サービス、施設管理、経理に総務と、現場での経験を重ね、社内の状況を把握して、ホテル業務の見直しに着手します。
「お客様が本当に求めていることを追求し、すべての業務内容を洗い出しました。まず、大きく変えたのは分散していた食事会場を集約し、スタッフを一元化したことです。客室へのご案内とお茶出し、清掃のダブルチェックなどを廃止しました。それは業務の精度を高める意識改革につながり、お客様に喜ばれるサービスについて考えるきっかけになったと思います。」
ホテルのターニングポイントは2010年でした。創業50周年、ブッフェスタイルのダイニング『波音(HAON)』をオープンし、桑島社長は、新たに総支配人と総料理長を迎え、東京の建築事務所に空間デザインを依頼しました。
「河口湖のリゾートホテルから新しく迎えた総支配人は知識も経験も豊富で、手書きのメニューや料理のスケッチはとても繊細。料理も素晴らしく、ぜひとも知床に来ていただきたいとお願いしたのです。」
知床の食材を活かした70品ものメニューをブッフェスタイルで味わえる“テラスダイニング波音”は好評で、料理の評価も飛躍的に伸びていきました。
「2017年にはダイニング“Grill Shiretoko(グリル知床)”をオープンし、知床エゾシカファームで処理された野生の鹿肉をメインに、縁のある香川県の名産を採り入れるなど、食材も工夫しました。」
仕事としての生産性を高めるため、積極的に取り組んでいるのが、担当部署を越えての相互サポートなのだそう。「経費削減のため、少ないスタッフで効率よく仕事をするにはどうすべきか知恵をしぼりました。再生1年目はサービスをカットしたことで、スタッフのモチベーションが下がりましたが、2年目に新しい総支配人が着任して、サービス内容や人員を根本から見直していくなかで、スタッフの気持ちも変わっていきました。」
一番の変化は笑顔と挨拶。桑島社長はお客様がホテルに求めるのは気持ちよく過ごせる空間であり、そのためにも笑顔と挨拶はしっかり行うよう心掛けました。
知床のありのままを体感してほしい
人材確保が難しい土地柄ではあるものの、業務改善によって収益は好転し、海外からのスタッフや知床好きで移住した人材も積極的に採用していると言います。
2005年7月に知床が世界自然遺産に登録され、冬の知床五湖もガイド付きで行けるようになったことで、訪れる人のニーズも自然をより深く体感できるものへと変化しています。
オホーツク海を覆う流氷やクジラ、トドなどの海洋生物、エゾシカ、ヒグマ、キタキツネなどの野生動物、知床ならではの自然がいかに稀少であるか、桑島社長は海外から訪れる人たちから気づかされたのだそう。
現在はサマーアクティビティとしては、知床ベアウォッチングや知床五湖ウォーク、知床ネイチャークルーズなど、冬の知床を体感できるウィンターアクティビティとして、流氷ウォーク®や知床スノーシュー自然散策、流氷バードウォッチングなどを用意しており、ありのままの知床を楽しめます。
世界に誇るリゾートとして、これからの北こぶしリゾートの飛躍が注目されます。