若者の半数以上が地方移住に関心あり!意識が変化しているその理由は?
GLOCAL MISSION Times 編集部
2023/04/25 (火) - 19:00

地方移住に関心が高いのは、子育て真っ盛りの子育て世代や定年後のセカンドライフを楽しもうとする世代だと考えがちですが、ある企業の調査で若い世代も地方移住に高い関心を持っていることがわかりました。若い人たちは生活に「新しさ」や「便利さ」ばかりを求めるだろうと思い込んでいる中年以上の世代には意外かもしれませんが、これにはどのような理由があるのでしょうか?今回は地方移住に関わる若者への調査結果を中心に、その理由について考えていきます。


若い世代の半数以上が地方での暮らしに関心あり

国内最大級のふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を企画・運営する株式会社トラストバンクが、東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)に住む15歳から29歳までの若者を対象に、地方暮らしに対する意識調査を行いました。調査の内容は「地方暮らしをしたいか?」や「地方暮らしに関心を持ったきっかけ」、「社会人として移住するとしたら理想の働き方は?」、「地方移住をする条件」、「理想の移住先」など多岐に渡りましたが、本調査ではまず、東京圏に住む若者の54.2%が地方暮らしに関心を持っていることがわかりました。

地方暮らしに関心を持ったきっかけは「実際に地方に行った経験」が31.3%ともっとも多く、続いて「地方暮らしをする家族・友人・知人の影響(24.9%)」、「新型コロナウィルスの感染拡大(23.6%)」、「地方暮らしに関するメディアやSNSの影響(21.0%)」、「昨今の物価高騰(17.7%)」となっています。実際に地方に行った経験や家族・知人からの影響は別としても、新型感染症の感染拡大やSNS、物価高騰の影響を受けている点は、昨今の世情や若者の思考が反映された結果だと言えるでしょう。


若者が地方移住に関心を持つ理由

地方暮らしに関心を持つきっかけが身近にあったとしても、それが関心にまで膨らむにはそれなりの理由が必要です。15歳から29歳の若者が地方移住に関心を持つ理由とは、いったいどのようなものなのでしょうか?同じ調査で地方暮らしの魅力について訊いたところ、その回答は以下のようなものでした。
・のんびり暮らせそう    68.7%
・自然豊かで癒されそう   42.6%
・都心よりも物価が安そう  39.3%
・趣味を充実させられそう  23.2%
・人とのつながりが増えそう 18.5%
・新しいチャレンジができそう 9.3%

「のんびり暮らしたい」、「自然の中で癒されたい」という魅力(希望)が上位であることからもわかるように、若い世代であっても、便利さや新しさではなく「ストレスの無い生活」を求めていることがわかります。企業において働き方改革の推進が叫ばれワークライフバランスの実現が求められる昨今、仕事と生活をバランス良く両立させ、自分らしい暮らしをすることは若者においても最優先に考えるべき事柄なのです。
また物価の高騰が続く現在の日本では、家賃や物価の安い地方への移住が現実的な選択肢となっているようです。同じ収入でより豊かに暮らすために、趣味を充実させた自分らしい生活を実行するために、若い世代は地方移住を活用しようと考えているのかもしれません。

一方、SDGsや社会課題の解決に関心のある若者に絞って質問すると、54.2%であった地方暮らしへの関心度が68.1%まで上がることも本調査で判明しました。SDGsやさまざまな社会課題に興味のある「意識の高い若者」ほど、地方移住に関心を持っているのです。これらの若者は地方移住後の暮らしについて、「サスティナブルを意識した暮らし」や「ボランティア活動」、「起業」などを行いたいと回答しています。同じ世代であっても、その興味の方向によって地方移住の活用の仕方が変わってくるのです。


地方移住を実行する条件

では地方移住に関心を持つ若者が、移住実行への障壁だと感じているものにはどのようなものがあるのでしょうか?本調査で「どのような条件が整えば移住したいか?」という質問に対して、以下のような回答が得られました。
・金銭面          61.1%
・地方での働き先      41.5%
・仕事のスキル・経験    30.3
・家族の状況        24.9%
・移住先の情報や知識    20.5%
・気持ちのふんぎり      18.6%

地方移住の課題として必ず挙げられるものには「仕事(収入)」や「住居」、「人間関係」などがあります。若い世代もやはり上位には「金銭面(収入)」と「働き先(仕事)」が入っていますが、一方で「住居」や「人間関係」に対する懸念がまったく挙げられていません。このあたりは世代による考え方の違いが現れているのかもしれません。いずれにせよ、せっかく地方移住に興味を持つ若い世代を地方に導くためには、「金銭面(収入)」と「働き先(仕事)」に対するケアが必要なのは間違いありません。


政府の推進する「デジタル田園都市国家構想」

政府は2021年から、デジタル技術を活用して地方活性化を実現させる「デジタル田園都市国家構想」を推進しています。この構想は「全国どこでも便利で快適に暮らせる社会」を実現するため、高速ネットワークの整備やデジタル技術の普及を促進して地方創生を加速させようという政策です。

デジタル田園都市国家構想では「地方移住を促す国の支援金拡充」の他、「デジタル基盤の整備」や「地方の課題を解決するためのデジタル実装(交通・農業・医療・教育・防災などの各分野について、デジタル技術を活用するための支援)」、「サテライトオフィス整備などによる転職なき移住の増加」、「企業の地方移転促進」などが実行されていく予定です。

幸いにして、ほとんどの若い世代はデジタルに対してアレルギーがありません。政府が推進するデジタル田園都市国家構想が実現すれば、懸念点としてあげられている「金銭面(収入)」と「働き先(仕事)」に対して、解決の目処がつくことでしょう。今は単なる希望として考えている若い世代の地方移住が、構想の実現に伴って現実的なものになっていくかもしれないのです。


まとめ

少子高齢化で過疎化が進む地方には、活力のある若い力が不足しています。現在でも地方移住に関わる支援策や助成金が政府や地方自治体によって用意されていますが、基本的に期限や上限のある支援のため場当たり的な印象は否めません。地方に移住し長く定住して貰うためには、移住者が自らの力で生活できる対策の確実な実行が大切なのです。


<参考>
トラストバンク、東京圏の若者対象に地方暮らしへの意識を調査 半数以上が地方暮らしに関心、人気1位は北海道 社会課題意識の高い若者ほど地方暮らしの意向強く
https://www.trustbank.co.jp/newsroom/newsrelease/press536/

【地方移住特集:前編】若い世代で高まる“地方移住願望”。半数以上が「関心あり」
https://www.nomura.co.jp/el_borde/real80s/0031/

地方で働きたい若者が増えている!? 地方移住の現状とメリット・デメリットとは?
https://financial-field.com/living/entry-172218

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