59もの市町村を有する福島県は、雪が多くウィンタースポーツが楽しめる「会津地方」、郡山市や福島市など、交通の利便性が高い「中通り」、マリンスポーツで人気の「浜通り」に分かれ、多様な文化・風土を形成しています。そんな福島への移住者の実態はどうなっているのでしょうか。ふくしまぐらし相談センター(認定NPO法人ふるさと回帰支援センター内)佐藤 晋さんにお話を伺いしました。
福島県の移住相談員になったきっかけや理由は何ですか。
福島県南相馬市出身で、大学卒業後は35年間、県外の百貨店で勤務していました。高校卒業後は福島と関りがなかったのですが、2011年の東日本大震災や原発事故でふるさとが大きな被害を受け、何もできず申し訳ない気持ちが強くあったのです。百貨店を退職後、ふるさと回帰センターで福島県の移住相談員のお話をいただき、これも縁あってのことと考え、ぜひ、やらせてくださいとお返事しました。
ふくしまぐらし相談センターとはどのような場所ですか。
ふくしまぐらし相談センターは移住相談員3名・就職相談員2名の5名体制でご相談を承っております。移住相談員と就職相談員が最低1名ずつ常駐しており、移住とお仕事の情報を同時に提供できるのが特徴です。
ここでは、その人がどの地域に合っているかまで考えて相談させていただきます。インターネットでは情報収集が難しいサポーターさんの人柄などについても、我々は把握していますので、うまくおつなぎできると思います。福島県には59もの市町村がありますが、7つのエリアに分け、移住相談をさせていただく移住コーディネーターがいるので、彼らを通じて、各地のサポーターさんの情報を得ることも可能です。
移住者の受け皿が整っている地域とそうでない地域についても考慮して、移住に向けて前進できる橋渡し役になるなど、ネットやAIにはできない提案ができ、提供するのが我々の役目だと思っています。
ふくしまぐらし相談センターにはいろいろな情報が集約しているので、まずは入口として、相談にお越しいただけたらうれしいです。
ふくしまぐらし相談センターの利用者の傾向などがあれば教えてください。
コロナ禍が落ち着いて、とりわけ今年の4月以降、転職をしないテレワーク移住の相談が増えてきました。というのも、コロナ禍が落ち着くまで、会社の制度がどうなるか分らないため、方針が固まってから移住を考えたいという方が多かったのだと思います。
20~40代の方の相談が70%以上を占めていますが、もうすぐ定年を迎える方もいらっしゃいます。コロナ禍ではなかなか行動に移せなかったご年配の方や女性の方の相談も増えており、相談内容も多岐に亘るようになりました。子どもの教育環境や移住者が多い学区についてなど、細かい質問が多くなったと思います。
ふくしまぐらし相談センターの利用時間や利用方法を教えてください。
月曜日と祝日を除き、毎日10:00~18:00迄ご相談を承ります。来所による対面相談、Zoom によるオンライン相談のほか、電話やメールでも対応しています。対面・オンライン・電話でのご相談はご予約をいただければお待たせしません。
移住された方で印象的な事例があれば教えてください。
会津地方に移住されてかすみ草栽培で就農されたご家族。そして、東日本大震災直後の2011年4月にフランスから来日し、原発事故で大きな被害を受けた地域で木苺を栽培するのだと、就農された女性がとても印象に残っています。
佐藤さんから見た福島県のよいところ、少し困ったところがあれば教えてください。
福島県は面積が広く、浜通り・中通り・会津の3地域で気候風土が異なります。交通の利便性が高いエリア、田舎暮らを満喫できるエリア、サーフィンやスキーを楽しめるエリアなど、多様な暮らしを選択できるところが魅力です。
温泉も多く、福島市では移住されてきた方に3つの公共の温泉施設を3年間無料で使える「湯巡り温泉パスポート」があり、みなさん、とても驚かれますよ。
課題は「移住したけれど、こんなはずじゃなかった」と思われる方がいらっしゃることです。ですから、まずは実際の暮らしを体験していただきたいですね。昨年から始まった、ふくしま「お試し移住村」では、村の案内人が体験コンテンツや地域活動コンテンツをご案内しているのですが、なかなか好評です。
体験しないと分からないのが「人」です。ですから、体験移住をする方には、「ぜひ、そこに住む人とお話ししてください。」とお伝えしています。移住する側だけでなく、受け入れる側の意識も大切だと思っています。
移住成功する人としない人では何が違うのでしょうか。また、移住を成功させるためには、どんな準備をすればよいのでしょうか。
移住を成功される方に共通するのは、移住に対してポジティブな考え方を持っている方です。ネットの情報に惑わされずにご自身の目・耳・足で情報収集を行い、その情報を確認し、取捨選択できる方でしょうか。
例えば、会津の体験ツアーは雪が最も降る時期に行います。一番、厳しい時期を体験しないと分からないですよね。
移住は大きな決断。移住する家族全員の賛成とそれぞれが移住後の暮らしに夢や希望を持っていること。そして、移住後のお金や子育て、進学など、将来のことについてまで考えて計画を立てることが大切だと思います。
福島県に移住するにあたって心構えがあれば教えてください。
特に心構えは必要ありません。何も決まってなくてもかまいません。福島が好きで、ぜひ、ここで暮らしたいという方は大歓迎です。
今回のセミナーでは「福島県で働く」ことをテーマに、「副業・兼業に関するセミナー」と「転職に関するセミナー」を開催します。まずは、「副業・兼業」についてですが、相談内容として増えてきていますか。
残念ながらあまり多くはありませんが、テレワーク移住の方や自営業の方のご相談で福島県のパラレルキャリア人材共創促進事業のご紹介をすると興味を示される方がいらっしゃいます。
「転職」について、どういった方が多いですか。
コロナ禍では、失職や収入ダウンによる地方移住と転職という方が多かったのですが、最近はUターンや嫁ターンなどで実家の近くに移住して転職される20~40代の現役世代の相談が増えた印象です。もちろん、なかには全く福島と関係がないという方もいらっしゃいますが。
佐藤さんの福島県への思いをお聞かせください。
ここ2年間で50回以上南相馬市の実家に行っていますが、白河から福島までの新幹線から見える景色、福島市から南相馬市までのバスの車窓から見える景色を眺めていると心が落ち着きます。福島は時間がゆったりと流れ、人も景色もなんだか「ほっ」とするところ。同じ風景を見続けているからこそ、分かることってあるんだなと思います。
移住を考えている方へのメッセージなどがあれば教えてください。
ふくしまの相談員は、移住したことで、幸せになったと感じていただくために、お手伝いをいたします。福島が適していないように思える方には、そのことをはっきり伝えますし、無理強いもしません。ぜひ、安心して「ふくしまぐらし相談センター」にご相談にいらっしゃってください。
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