地方転職や移住を考えたとき、地名は知っていても暮らしぶりはどうなのか、なかなかイメージしづらいですよね。実際、都市の規模によって暮らしの様子や利便性などもさまざまです。今回は、政令指定都市の中でも“札仙広福”といわれる人気都市の中から、広島県広島市をご紹介します。
政令指定都市として中国・四国地方の中枢を担う広島市。約119万人(2020年2月1日現在)の人口を抱え、市中心部には都会的な街並みが広がる一方で、中国山地と瀬戸内海に育まれた豊かな自然にも恵まれています。気候も温暖で住みやすい街というイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか。移住を考えている人が本当に知りたい広島での暮らしについて、そのメリット・デメリットをまとめてみました。
【広島暮らしのリアルな4つのメリット】
地方における大都市の一つである広島市は、都心部と遜色ない生活水準の高さと、地方ならではのコンパクトで暮らしやすい生活空間が最大の魅力。
1. 街がほどよくコンパクト!
中国山地から流れくる太田川の河口デルタ上に広がる広島市は、街自体が非常にコンパクト。平地が少ないため、市中心部に県庁などの公共機関をはじめ、商業施設や銀行、美術館といった文化施設まで、あらゆる要素がぎゅっと集約されています。
県庁のある中心部「紙屋町(かみやちょう)」周辺には平和記念公園や原爆ドーム、広島城など観光スポットが集中しており、ショッピングも楽しめる繁華街「八丁堀」や「本通り商店街」にはパルコやアパレルのセレクトショップ御三家(BEAMS、UNITED ARROWS、SHIPS)が揃い、飲み屋が立ち並ぶ中国・四国地方最大の歓楽街「流川」など、これらすべてが半径2km圏内に揃っています。
そんな街中の移動には駅間の距離が短く、本数も多い路面電車が便利。スピード感はないので急いでいる時には不向きですが、のんびりと車窓をながめながら路面電車に揺られての移動は東京では決して味わえない感覚でしょう。
また平地が少ない広島では、住宅地は丘陵部を切り開いた郊外に多くあります。以前は広島市中心部へのアクセスが不便な場所もありましたがここ数年で道路の整備が飛躍的に進み、車で30〜40分ほどで行けるようになりました。地価も安く、ほどよく自然が残る環境は家族とスローライフを楽しみながら仕事も充実させられると、若い子育て世代に人気です。
2. 牡蠣を中心とした瀬戸内の魚貝類が美味い!
地方には何かしら美味しい旬の味覚があるものですが、広島といえばやっぱり牡蠣!中国山地から流れ込む栄養分をたっぷり蓄えた、瀬戸内海で獲れる広島産牡蠣の生産量は全国1位。身は大きくプリッとしていて、濃厚な味わいが特徴です。旬を迎える2月頃には呉市や宮島など各地で十数件の牡蠣祭りが盛大に開催され、広島県の公式ホームページにも「広島かき祭りカレンダー」が登場するほど。殻付き牡蠣やむき身が特価で販売されたり、焼き牡蠣や牡蠣フライといった牡蠣料理が振舞われるなど、まさに牡蠣づくしのお祭りを毎年多くの地元民が楽しみにしています。
また牡蠣以外にも鯛やタコ、穴子、サワラなど年間を通して味わえる瀬戸内の海の幸が豊富。市民の数に対して飲食店の数が多いといわれる広島市ですが、牡蠣をはじめ、旬の新鮮な魚介を使った料理や天ぷらの専門店も多く、年中新鮮な海の幸をいただけるという環境はグルメの人にはたまらないかも!
3. スポーツに触れる機会に恵まれている!
地方都市には多くのプロスポーツチームが本拠地を置いていますが、広島にはサッカーの「サンフレッチェ」、バレーボールの「JTサンダース」、バスケットボールの「広島ドラゴンフライズ」などたくさんあります。スポーツ観戦はもちろん、県内各地で選手たちとの交流イベントやスポーツ体験会が行われるなど、スポーツに触れる機会に恵まれています。リトルリーグや少年少女のサッカーチームも多く、子どもの頃からスポーツに親しむ環境が整っているのは、子育て世代には嬉しいポイントではないでしょうか。
そして広島といえばやっぱり「カープ」!試合がある日に球場付近がカープの赤いレプリカユニフォームを着たファンで溢れかえる様は、もはや広島を代表する風物詩になりつつあるほど。JR広島駅から球場まで続くカープロードは観戦用グルメやビールを販売するお店が軒を並べ、まるで縁日のような賑やかさです。カープのホーム球場「Mazda Zoom-Zoomスタジアム広島」もアミューズメントパークのような仕掛けがたくさんあり、子どもにも大人気。広島に移住したらカープ観戦はきっと楽しみなレジャーの一つになるでしょう。(ただし、最近は人気すぎて自由席のチケットでさえ入手困難となっています)
4. アウトドアレジャーが日帰りで楽しめる!
東京に住んでいると海水浴やスキーといったアウトドアレジャーは計画を立てて遠出するイメージですが、海と山に囲まれた広島では、日帰りで気軽に楽しむことができます。瀬戸内海は波が穏やかなのでサーフィンなどは不向きですが、小さな子ども連れでも安心して出かけられる海水浴場がたくさんあり、家族連れにはもってこい。また県北に足を伸ばせば初級者向けから上級者向けまでスキー場も揃っているので、夏も冬もアウトレジャーには不自由しません。
さらに昨今、広島で人気を集めているのがサイクリング。広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ「瀬戸内しまなみ海道」はサイクリストの聖地として知られているほか、島しょ部を巡るサイクリングコースもたくさんあり、市民のサイクリング熱も高まっています。
【広島暮らしのリアルなデメリット4つ】
いいこともあれば悪いこともある…広島独特の方言やアツすぎるカープ熱など、馴染めなければ苦痛に感じるデメリットもいくつかありそうです。
1. カープ熱が高過ぎる
メリットとして伝えた広島のカープ熱ですが、もしあなたがカープに興味を持てなければそれはかえって苦痛に感じるかもしれません。地元ローカールTV局のカープ情報の扱いの多さは、県外から来た誰もが驚くところ。朝夕の情報番組ではシーズンオフ中もカープ選手の一挙一動が取り上げられ「どうしてこんなにカープの話ばっかりなの!?」と呆れる声も。職場やご近所さん同士でもカープの話で盛り上がることも多く、カープファン以外は肩身の狭い思いをすることがあるかも!?
2. 公共交通機関の種類と本数が少ない
広島の私鉄は路面電車を運営する広島電鉄と、広島中心部と北西部を結ぶ新交通システム「アストラムライン」を運営する広島高速交通の2社しかありません。街中の移動には路面電車が便利ですが運行地区は限られており、郊外となるとバス移動がメインになります。バスは道路状況に影響されやすく、ガソリン代の高騰や人口減少に伴い本数が少なくなっている地域もあり、住む場所によってはマイカーが必須になることも。東京の便利な電車生活に慣れている人は、広島の公共交通事情を少し不便に感じることもあるでしょう。
3. 広島弁は怖くて馴染みにくい!?
地方には多かれ少なかれその土地の訛りがあるものですが、移住者からもよく聞かれるのが、「広島弁が独特すぎて慣れない」「広島弁が怖い」という話。広島人あるあるとしては「たう(=届く)」「はぶてる(=すねる)」など広島弁を方言と気がつかずに使っている人がとっても多いようです。「〜じゃけえ(=〜だから)」「〜しんちゃい(〜しなさい)」など独特な言い回しに、東京から来た人がなかなか馴染めないというのは無理もない話です。それでも子ども達は1年も経たないうちにすっかり広島弁を使いこなしているという噂も。そんな子ども達の柔軟さは大人も見習いたいところですね。
4. 物価がそれほど安くない
東京から地方都市へ移住した時に、一番メリットとして感じるのは家賃や物価などの安さではないでしょうか。その面で考えると、広島市はあまり期待に応えられないかもしれません。もちろん、郊外の住宅地ほど家賃は安くなる傾向がありますが、広島市は平地が少ない分、中心部近辺は物件数が限られるため家賃はさほど安くならないというのが実情です。食費についても、地方とはいえ都心部なので、農産物も市場を介して流通してくるものが多く、食費などは東京とさほど変わらないといえるかもしれません。
まとめ
広島市の住み心地について地元目線でメリット・デメリットをいろいろご紹介しましたが、温暖な気候に豊富な海の幸山の幸、活発なスポーツ文化やコンパクトにまとまった中心部の利便性など、トータルで考えるとやはり広島市は住みやすい街といえるのではないでしょうか。 仕事面はもちろん、家族を築いていく上で重視したい“住み心地”。確かな情報を参考に、広島移住を検討してみてください。